何度でもオールライトと歌え [著]後藤正文

[文]永江朗  [掲載]2016年06月14日

表紙画像 著者:後藤正文  出版社:ミシマ社

■音楽の仕事と政治

 アジアンカンフージェネレーションというバンドがある。略してアジカン。テレビにほとんど出ないが、若者を中心に絶大な人気を誇る。
『何度でもオールライトと歌え』は、アジカンのボーカル、後藤正文による初のエッセイ集。アジカンの公式サイトに掲載された日記を編集したもので、東日本大震災以降の後藤が考えたことや感じたことが書かれている。
 音楽の話、アルバム制作やコンサートの話、身辺雑記もあるけれども、ぼくがグッときたのは、原発問題や改憲・安保問題についても率直に意見を述べているところだ。官邸前デモに参加していることについても書いている。
〈ミュージシャンは音楽だけをやっていろ、という言葉を割とよく見かけるのだけれども、政治的なものとそうでないものがパキッとふたつに分かれていると考えるのは間違いだと思う〉と後藤はいう。
 同感だ。ギターのコードの先が発電所につながるように、日常のあらゆるものは政治につながっている。
 とはいえネット時代、政治的発言をすることへのバッシングもすさまじいようだ。反原発や護憲を語るだけで、「お花畑」などと侮蔑の言葉を投げつけてくる輩もいることが、後藤の文章からもうかがえる。音楽活動に影響はないかと、ちょっと心配になる。
 それでも後藤は、憎悪の言葉に憎悪で返すのではなく、対話を求め続ける。関係を断ち切れば楽なのに、あえて引き受けようとしているのだ。それもまたミュージシャンの仕事であるかのように。たのもしくて、かっこいい。アジカンの音楽がますます好きになった。

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