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医薬品とノーベル賞―がん治療薬は受賞できるのか? [著]佐藤健太郎

2016年10月16日

■基礎科学との違いは「評価の揺らぎ」

 今年も日本人がノーベル医学生理学賞を受賞したが、それは基礎科学の研究成果に与えられたものだった。一方、より実用的な医薬品に関するノーベル賞は伝統的に出難いとされる。本書によれば、その理由は医薬品に対する評価の揺らぎにあるという。
 つまり開発された当初は非常に期待された新薬でも、数年後に重大な副作用が発覚して使用されなくなった。が、さらに数十年後に意外な新しい用途が見つかって復活した、という薬がいくらでもあるという。このように医薬品の評価が定まらないと、確かにノーベル賞は授与し難い。
 この点、昨年ノーベル賞を受賞した大村智博士らの「イベルメクチン」はむしろ例外的で、アフリカ大陸で猛威をふるう「オンコセルカ症」(河川盲目症)から2億人以上の患者を救ったという、有無を言わさぬ薬の効力が受賞を手繰り寄せたようだ。
 本書はこうしたノーベル賞関連のエピソードをちりばめつつ、近代医薬の誕生から現代の開発現場まで幅広く紹介する。特に最たる死亡要因であるがんについて、各種治療薬のメカニズムを細胞レベルまで踏み込んで解説。さらに薬価問題など社会的な視点からも開発の課題を指摘する。

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