ジェントルな言動、褒めて伸ばす 三浦しをんさん

[文]三浦しをん(作家)  [掲載]2016年12月04日

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三浦しをんさん

■相談 父の一挙一動にイライラします
 父(57歳)が嫌いです。ひとりごとやげっぷ、うるさい笑い声。ふざけた言動が多く、音を立てて食べる。一挙一動にイライラします。住んでいるマンションは、同じ部屋にいなくても音が筒抜けになります。なるべく父がいる時は家にいないようにしていますが、限界があります。父への自分勝手な嫌悪感をなんとかしたいです。
 (奈良県、女子高校生・17歳)

■今週は三浦しをんさんが回答します
 お悩みに共感し、うなずきすぎて首がもげるかと思いました。
 私は父とわりと会話をするほうですが、それでも思春期から二十代前半にかけては、父のことがいやでなりませんでした。「お父さん」と呼んだらおならで返答し、「すごいタイミングだったと思わないか」と同意を求めてくるような父なのです。デリカシーのかけらもない!
 しかし、夫や恋人や父親が超絶美形で、げっぷもおならもしない人物だったら、それはそれで気詰まりな生活になりそうです。そう思ううちに、徐々に諦めがついてきました。親子といえども、当然ながら別個の人間です。父を反面教師に、せめて自分は無神経な言動を慎もうと心がけています。また、「父も一個の人間である」ということを尊重しつつ、改善してほしい点はそのつど粘り強く申し入れています。
 父親への嫌悪感は、年齢とともに薄らぐ気がします。精神的にも物理的にも、適切な距離を取れるようになるからでしょう。おいやだとは思いますが、お父さまを完全に遠ざけてしまわないでください。対話を避けることは、お父さまという「人間」を知る機会を失い、ひいてはお父さまとの適切な距離を測る機会を失うことにつながるからです。
 お父さまは娘に甘え、コミュニケートしたいがゆえに、わざと相談者をいらだたせるような言動を取っている、という面もあると思います。なるべく冷静に、「他者を不快にさせる言動は控えるように」と伝えつづけましょう。そして、お父さまが少しでもジェントルな言動をしたら、褒めて伸ばす。ひとは死ぬまで内面的に成長できる生き物です。よき方向へとひとを変化させる最大の原動力は、周囲のひとの愛情(率直な提言も込みで)です。
 松本大洋の漫画『花男』(小学館・全三巻)を読めば、「うちの父も、かわいいもんだな」と優しい気持ちになれるかもしれません。破天荒な父親に振りまわされる小学生男子の、夢のように楽しく、切なく、うつくしい物語です。
    ◇
 76年生まれ。作家。『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞。
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 次回の回答者は詩人の水無田気流さんです。
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 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を差し上げます。

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あの家に暮らす四人の女

著者:三浦 しをん/ 出版社:中央公論新社/ 発売時期: 2015年07月


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