子どもと貧困 [著]朝日新聞取材班

[文]森健(ジャーナリスト)  [掲載]2016年12月11日

■過酷な現場から、支援の課題考える

 お風呂に1カ月入らず頭にシラミがわいた7歳と4歳の姉妹。歯医者に行けず10本の乳歯が根だけになった9歳の男児。空腹からティッシュを口にし「甘いのもあるんだよ」と言う9歳と8歳の姉妹。
 どのページも過酷な貧困が描かれる。昨年来続く朝日新聞の連載「子どもと貧困」が書籍化された。まとめて読むと、子どもを巡る現代の貧困が深く理解できる。本書は第一部が現場ルポ、第二部が支援・政策・制度を識者と考察するつくりだ。
 背景分析も興味深い。たとえば母子世帯の貧困。よく知られる話だが、母子世帯で養育費を受け取っているのは2割弱。8割は支払っていない男側と制度の問題だ。また、親が子どもにお金を要求する経済的虐待といった問題。こうした問題把握が第二部の制度面の課題考察につながる。
 本書を本欄で扱うのは経済としても問題だからだ。親の低所得の背景にあるのは非正規労働の拡大。そのほか女性の労働、賃金体系、長時間労働と多様な労働問題がつながっている。貧困対策をしなければ、15歳の子どもの生涯所得は2・9兆円少なくなり、税収も1・1兆円減るという。
 これは私たちの将来にかかっている話なのである。

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