結んで放して [作]山名沢湖

[文]南信長(マンガ解説者)  [掲載]2016年12月11日

表紙画像 著者:山名沢湖  出版社:双葉社

■描くことに魅せられた同志たち

 あくまでも推計にすぎないが、現役のプロ漫画家は約1千人、同人誌やウェブで作品を発表するアマチュア作家は数十万人とも言われる。それだけ多くの「マンガを描く人」がいるなかで、「描き続けること」の難しさと尊さを痛感させるのが本作だ。
 4編からなるオムニバス形式のストーリー。同人誌即売会で憧れの描き手に感想の手紙と自分の作品を〈よかったら読んでやって下さい〉と手渡した大学生女子は、その後プロの漫画家となる。一方、〈憧れの人〉は転勤、結婚、出産を経るうちに、いつしか描かなくなっていく。
 そんな2人の関係を軸に、マンガを描くことに魅せられた女性たちの人生を切なくも温かく綴(つづ)る。プロとしてのジレンマ、残業続きの仕事、子育てや介護、母親の過干渉など、抱えるものはそれぞれ違えど、マンガ愛だけは共通。互いに触発されリスペクトし合う姿には、まさに同志という言葉がふさわしい。
 派手さはないが、すっきりした絵柄と誠実な作風は好感度大。マンガの裾野の広がりと未来へのバトンリレーを感じさせるラストは美しい。マンガに限らず何らかの創作に携わったことのある人なら心が疼(うず)くこと請け合いだ。
    ◇
 双葉社 648円

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