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老いる家 崩れる街―住宅過剰社会の末路 [著]野澤千絵

2016年12月18日

■高度成長期の政策、転換が急務

 人口も世帯数も減っていくことが確実なのに、空き家の急増を見て見ぬふりで新築住宅が次々に建てられる。我々はそんな「住宅過剰社会」に生きているという。都市にはタワーマンションが林立し、郊外では農地を虫食うように住宅地が拡大する。無策のままだと、およそ15年後には3戸に1戸が空き家になる時代が来ると本書は警告する。
 背景に潜むのは、野放図な宅地開発を許す都市計画や「売れるから建てる」という業者の無責任さである。欧米に比べて日本では中古住宅の市場が未成熟。そこで新築に人気が集まるのだが、もともと住宅があった敷地に再び住宅が建てられる割合は、新築着工数全体のわずか10%だとか。結果、居住地が無秩序に広がり、上下水道の整備やゴミ収集といった財政負担が自治体に重くのしかかる。
 水害の危険区域に長期優良住宅が建てられる悪夢のような事態も。老朽化した分譲マンションのスラム化、買い手がつかず維持管理費だけがかさむ「負動産」の増加など、将来の懸念も尽きない。次世代にツケを残さないためにも方向転換が急務。諸悪の根源は高度成長期の亡霊のごとき住宅政策から抜け出せないことにあると痛感した。

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