オリエンタルピアノ [著]ゼイナ・アビラシェド

2016年12月18日

■具体と抽象を行き来、音楽感じさせる

 今年後半は海外の傑作の翻訳出版が相次ぎ、新たな表現の可能性を切り開く意欲作も目についた。中でもリチャード・マグワイア『HERE ヒア』(国書刊行会)と並んで、特に強い印象を残したのがこの作品だ。
 物語の舞台はベイルート。ヨーロッパ産の楽器であるピアノが、1950年代にこのアラブの地で、ある男の手で作りかえられ、新たな音を獲得しユニークな1台に結実していくドラマが描かれる。
 タイトルどおり、音楽を感じさせる作品だ。テーマだけでなく、そもそもまんがが音楽のように描かれている。手法は大胆だ。シンプルにデザイン化された絵が、白黒の画面の中でリズミカルに踊り、明滅し、響き合い、豊かなイメージを生み出している。具体的に描かれた絵も、やがてパターンの渦に巻き込まれ、逆に抽象的に見えた絵が、いつの間にか具体的に何かを雄弁に語りだす。
 著者らしき人物のドラマも並行して進み、時代と空間が画面の上で交錯しながら、物語は終結部へ向けて深まる。絵と字の組み合わせで、どんな表現が可能なのか? 既存のまんがからいったん離れて原点に立ち返り、オリジナルな描き方に挑んだ傑作だ。
    ◇
 河出書房新社 2592円

オリエンタル・ピアノ

著者:ゼイナ アビラシェド、Zeina Abirached、関口 涼子
出版社:河出書房新社

表紙画像

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