ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由 [著]小林せかい

[文]勝見明(ジャーナリスト)  [掲載]2017年01月08日

■合理的で、心が引き込まれる仕組み

 メニューは日替わり定食1種だけ。店の手伝いをすると1食無料になる「まかない」、無料の権利を他の客に譲る「ただめし」、店にある食材でオーダーメイドできる「あつらえ」など、独自の仕組みで注目を集める「未来食堂」。2015年9月に開業した著者がその「裏側」を明かす。
 少女時代は偏食。「おいしさの押し付け」に息苦しさを覚えた。15歳で初めて一人で喫茶店に入る。学校や家の枠にとらわれない「個」としての自分が受け入れられる解放された空間に衝撃を受け、将来、「お店を持つ」と決めた。
 IT技術者を経て、東京・神保町で「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」として開業。「あつらえ」は一人ひとりの「おいしさ」を「ふつう」に受け入れる。「ただめし」を利用した人は次は自分が「まかない」へ。酒の持ち込み自由で半分は他の客にふるまう「さしいれ」は人から人へのつながりを広げる。目指すのは、そんな「螺旋(らせん)型コミュニケーション」だ。
 「まかない」は従業員ゼロ、「あつらえ」は在庫ロス削減を可能にする合理的な面も併せ持つ。それ以上につながりへの共感の広がりが黒字を支える。ふと読み手も心が引き込まれていることに気づく。



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