イノベーションはなぜ途絶えたか―科学立国日本の危機 [著]山口栄一

2017年01月22日

■起業家精神育たぬ、制度設計の失敗

 かつて「科学立国」と呼ばれた日本の産業基盤が揺らいでいる。1980年代に栄えたエレクトロニクス産業は今や衰退し、医薬品など21世紀を担うバイオ分野でも国際競争から脱落。本書によれば、その主な原因は「イノベーション政策の失敗」にある。
 日本では90年代、製造業など大手が基礎研究所を廃止したことで、産業競争力が衰えたとされる。しかし実は米国でも同時期、AT&Tやゼロックスなど大企業が基礎研究から撤退していた。が、米国はその後、ITや医薬品などで技術革新が巻き起こったのに、日本はそうならなかった。
 両者の違いはどこから生じたのか? 当時、米国政府は「大企業はもはやイノベーションを起こせない」と見切りをつけ、技術革新の新たな担い手として大学院生らの起業を支援する「SBIR制度」を創設。これが卓越した審査・報賞方式によって目覚ましい成果を上げたため、日本政府も追随しようとしたが、実際には「パフォーマンスの低い中小企業」への補助金制度と化し、国税の浪費に終わった。
 日本で起業家精神が育たないのは、リスクを避ける国民性ではなく、制度設計に原因がある。これを修正すれば、産業競争力は復活するという。(小林雅一=ジャーナリスト)

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