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失敗の科学―失敗から学習する組織、学習できない組織 [著]マシュー・サイド [訳]有枝春

2017年02月12日

■正解を導き出す、ミスの活用法

 アメリカでは、年間40万人とも50万人ともいわれる人が回避可能な医療過誤によって死亡しているという。
 過去の過ちから学ばず、愚かなミスが繰り返されるのはなぜか。人は元来、失敗を認めようとしないもの。自尊心の強いエリートほど頑(かたく)なで、“不都合な真実”を受け入れずに自分を正当化する。ミスを隠蔽(いんぺい)した自覚すらない、というから厄介だ。
 だが、企業も個人も、失敗を糧に試行錯誤を重ねてこそ成長できると著者は説く。航空業界が高い安全性を誇るのは、事故を徹底的に検証し、システムを改善しているから。成功の鍵は、失敗との向き合い方にあり。安易な犯人捜しや罰則の強化は裏目に出るというのだ。
 恥や不名誉ではなく、失敗を貴重な学習機会と捉える組織文化はどうすれば育つのか。小さな改善を積み重ねて最適化を図る、失敗したと想定して“うまくいかなかった理由”を事前に検証するなど、多様なアプローチを紹介しながら、失敗の活用法に迫る。
 失敗は、正解を導き出す「一番手っ取り早い方法」という指摘が新鮮だ。歴史的な事故などの実例もふんだんに。人間の可能性に対する温かな眼差(まなざ)しが心に残った。(梶山寿子=ジャーナリスト)

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