将棋めし(1) [作]松本渚 [将棋監修]広瀬章人八段

[文]南信長(マンガ解説者)  [掲載]2017年02月12日

表紙画像 著者:松本 渚  出版社:KADOKAWA

■対局時の食事に注目、実在店も登場

 多様化細分化の進む食マンガ界に、またひとつニッチな新作が現れた。題材は棋士の対局時の食事。確かに将棋記事にも誰が何を食べたか書いてあったりするが、そこを攻めてくるとは奇手である。
 主人公は、現実にはまだいない女性プロ棋士だ(女流とは違う)。仕事柄負けず嫌いで、対局相手とメニューがかぶるのは嫌。自分が食べようと思っていたものを先手に取られると長考に入り、出前のうな重で相手が竹を頼めば松を張り込む。食べ物を駒や戦法に見立てる盤外の戦いが食事休憩後の対局に生かされるという構成は技ありだ。
 実際、脳をフル回転させる棋士にとってエネルギー補給は大事だろう。食事にも性格や棋風が反映され、好手悪手があるというのはさもありなん。棋譜については門外漢ゆえ判断できないが、食の描写はしっかりうまそうで食欲をそそる。将棋会館近隣の棋士御用達の実在店も登場し、将棋ファンにはまさに垂涎(すいぜん)。
 将棋+食という企画の面白さだけでなく、棋士の生きざまを描くドラマとしても意外な深みを見せる。女流棋士の微妙な立場や駒の動かし方も覚束(おぼつか)ないミーハー的ファンの心理もすくい取る手筋には、美しさすら感じてしまう。
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 KADOKAWA 648円

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