作品愛する人の力借り、仲良しに 穂村弘さん

[文]穂村弘  [掲載]2017年02月12日

62年生まれ。歌人。近著に『野良猫を尊敬した日』『穂村弘の、こんなところで。』など。 拡大画像を見る
62年生まれ。歌人。近著に『野良猫を尊敬した日』『穂村弘の、こんなところで。』など。

表紙画像 著者:長崎訓子  出版社:パイインターナショナル

■相談 本をすぐに投げ出してしまいます

 お恥ずかしい質問ですが、読書が必要とわかっていても、なかなかなじめません。若い頃から本を買ってもすぐに投げ出し、ミステリー小説ですら読んでも頭に入りません。読書三昧(ざんまい)という言葉が好きなのですが、読書を習慣づけるために何かいい方法がありますか。勉強や読書が好きな人は苦にならないとは思いますが、ご体験含めて教えてください。
 (山形市、男性、70歳)

■今週は穂村弘さんが回答します
 私は子供の頃から本が好きだったのですが、或(あ)る年齢を超えた頃から、世界の名作と云(い)われる本のほとんどは読まないまま一生を終えるんだなあ、と思うようになりました。気持ちは焦るけど、本というものは意志や習慣の力だけで読み進むことはなかなか難しいみたいです。やはり面白いと思えないと。
 そこで、ちょっと違ったやり方を考えました。自分で一冊ずつ読むのではなくて、他人の力を借りるんです。具体的には、或る作品を愛する人に、それはどんな内容なのかどこが面白いのかを教えて貰(もら)う、という方法です。優れた書き手が、お薦めの作品の魅力を伝える本を出してくれています。
 例えば、『MARBLE RAMBLE(マーブル・ランブル)』(長崎訓子著)。これは「名作文学漫画集」という副題の通り、文学作品を漫画化した本です。この中には佐藤春夫「蝗(いなご)の大旅行」、夏目漱石「変な音」、梅崎春生「猫の話」、向田邦子「鮒(ふな)」、蒲松齢(ほしょうれい)「偸桃(ちゅうとう)」、曹雪芹「紅楼夢」、海野十三「空気男」、モーパッサン「墓」「髪」、シャルル・ペロー「青ひげ」、横光利一「頭ならびに腹」が収録されています。漫画なので手に取りやすく、しかも文学的な香気は全く失われていません。一冊読むだけで、憧れの「読書三昧(ざんまい)」ができると思いますよ。気に入った作品があったら、改めて原作を繙(ひもと)いてみるのもいいでしょう。内容はもうわかっていますから読みやすいと思います。
 漫画ではなくて活字の本がご希望でしたら、『冬の本』(夏葉社、1836円)はどうでしょう。84人の書き手が見開きごとに一冊ずつ、「冬」を感じるお気に入りの本の魅力を語っています。好きなところからぱらぱら読み出して、全部で84冊(以上)の本に触れることができるんです。薦められている本はもちろん、書き手の文章が気に入ったら、その人自身の作品に手を伸ばしてみてもいいですね。全ての本は、全体で一つの生き物みたいなところもあるから、触りやすいところから少しずつ撫(な)でてゆくと仲良くなれると思います。
    ◇
 次回は評論家の荻上チキさんが答えます。
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 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。

この記事に関する関連書籍

marble ramble 名作文学漫画集

著者:長崎訓子/ 出版社:パイインターナショナル/ 発売時期: 2015年08月


冬の本

著者:天野祐吉、佐伯一麦、柴田元幸、山田太一、武田花、友部正人、町田康、安西水丸、穂村弘、堀込高樹、ホンマタカシ、万城目学、又吉直樹、いがらしみきお、池内 紀、伊藤比呂美、角田光代、片岡義男、北村薫、久住昌之、装丁:和田誠/ 出版社:夏葉社/ 発売時期: 2012年12月




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