著者に会いたい

教養としての「世界史」の読み方 本村凌二さん

2017年02月19日

『教養としての「世界史」の読み方』を出版した歴史学者の本村凌二さん=山本和生撮影

■現代の問題、過去に投げかける

 世界史を概観する本が人気を集めているが、歴史家によるものは意外と少ない。専門の地域・時代を越えて発言することをはばかるからだ。古代ローマ史の泰斗が、満を持してブームに応えた。
 「教養とは何かを自分なりに考えると、古典と世界史が基本になると思います」。法政大と東京大、早稲田大を通じて「教養」とつく学部で教えてきた。「地中海全体、ときには全世界に視野を広げて話す中で、本になるエッセンスができてきました」
 単調な通史ではなく、本村流「歴史哲学」をつづった。「ローマの歴史の中には、人類の経験のすべてが詰まっている」という政治学者の丸山真男の言葉が、核となる哲学の一つだ。米国でオバマ氏が初の黒人大統領として就任したのは、初代から数えて220年目。ローマ帝国の初代皇帝就任から、初の異民族の皇帝が就任するまでの期間と一致するという。
 一方でローマ史に縛られず、たとえばアルファベットと一神教と貨幣がほぼ同時代に生まれたことに注目し、文明における「単純化」の動きを見いだしたりもする。「関連づけて考えることで、過去がいきいきと感じられる」という自由な発想だ。
 昨年はカルチャーセンターで民族移動の講義を担当し、その盛況ぶりに難民問題への関心を実感した。「現代が抱える問題を過去に投げかけ、意味をくみ取ることが歴史家の役割。ただ、自分が現代の立場から過去を見ていることに自覚的であるべきです」
 競馬、居酒屋、裕次郎を愛する庶民派は、もうすぐ古希。歴史を一般の人たちに近づける試みは続く。(吉川一樹)
    ◇
PHPエディターズ・グループ・1944円


関連記事

ページトップへ戻る