コミック

セブンティウイザン(1) [作]タイム涼介

2017年02月19日

■授かった命が育む高齢夫婦の絆

 トリッキーな設定ながら、投げかけてくるメッセージはど直球の作品だ。
 定年退職を迎えた江月朝一はその日の帰宅後、妻・夕子から妊娠を告げられる。朝一が何かの病気と勘違いしているのでは?と疑い、困惑するのも無理はない。朝一は65歳、夕子は70歳なのだから。定年後は2人でぶらぶら温泉巡りのはずが、半月に一度の妊婦検診にパパママ教室。穏やかな老後を送ろうと思っていた朝一のプランは一変する。
 突如授かった大きすぎる未来に不安はいかばかり……と思いきや、体力の衰えを夫婦の絆で乗りこえ、喪失の悲しみを思い出に変えながら、前向きに誕生に備える。作中、戸惑う朝一に比べて夕子が泰然としている理由が、我が子へのビデオメッセージという形で明かされる。覚悟を決めた人は美しいものだが、夕子もどんどんキレイに思えてくる。そんな妻の傍らで何度も心洗われる朝一もまぶしい。
 作中「命のこととそれ以外のことを同列に考えてはいけないな…」という朝一のセリフがある。世界はたくさんの不安に満ちていて、つい物事を難しく考えてしまいがちだ。しかし、本当に大切なことはとてもシンプルだということを本作は教えてくれる。(山脇麻生=ライター)
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 新潮社 626円

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