死してなお踊れ―一遍上人伝 [著]栗原康

[文]栗下直也  [掲載]2017年02月28日

表紙画像 著者:栗原 康  出版社:河出書房新社

 名家の生まれながら、全てを投げ捨て、「踊り念仏」で民衆を救おうとした一遍上人の評伝。著者は大杉栄などアナキストを近作で描いてきたため、鎌倉時代の宗教家を取り上げるのには違和感を抱いたが、一遍こそ元祖アナキストというのが著者の持論だ。支配されることを嫌い、やりたくないことを拒否し、何も欲しない。開宗も望まない。とはいえ、民衆は欲にまみれた現世からどうすれば自由になれるのか。一遍の答えはシンプルだ。空っぽになればよい。全部捨てて踊り狂えばいい。アナーキズムの視点で一遍の人生を辿ることで、存在を急に近く感じることができる。
 軽妙な文体は健在。嫌なことがあれば、思わず、ぴょんぴょん跳ねて踊りたくなるのは著者の筆力か、一遍の魅力か。読後の爽快感に満ちた一冊だ。

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