文庫この新刊!

池澤春菜が薦める文庫この新刊!

2017年03月05日

 (1)『ブラウン神父の童心』 G・K・チェスタトン著 中村保男訳 創元推理文庫 799円
 (2)『破壊された男』 アルフレッド・ベスター著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF 864円
 (3)『おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱』 オキシタケヒコ著 講談社タイガ 778円
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 時代を経て愛される物語には、理由があるものだ。
 チェスタトンの生み出した愛すべき名探偵、ブラウン神父。ミステリーとは世界を逆さに見る面白さ、それを教えてくれたこの(1)は、今なお私の好きなミステリーベスト10に入る。12の短編はどれも機知に富み、ひねりもスパイスもピカイチ。新装版を機に、ぜひ読んでみて欲しい。
 ベスターもまた時を超えて読まれて欲しい作家だ。疾走する想像力をエネルギーに時間と空間を縦横無尽に飛び回る作品群は圧倒的。(2)はテレパシーが全ての秘密を暴き出す社会で完全犯罪を目論(もくろ)む大富豪と心理捜査局総監との豪華絢爛(けんらん)宇宙絵巻。唖然(あぜん)とする結末をお楽しみに。
 (3)は新しい作品。理解のできない恐怖が解体されて裏返り、理解できたと思った瞬間に再び裏返って見知らぬ顔をのぞかせる。謎と不思議に満ちたボーイミーツガールは、最後にとびきりの爽やかさにたどり着く。読み終わった時、きっとあなたも新しい彼岸を垣間見る。

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