我が名は、カモン 犬童一心さん

2017年03月05日

「我が名は、カモン」の著者、映画監督の犬童一心さん=山本和生撮影

■「熱さ」にあこがれ、歯止めなく

 原作ものが増え、オリジナル作品を撮る機会が減った。でも、アイデアは次々と浮かぶ。映画を撮る予定が飛んで時間が空いた時、編集者から小説の世界へと誘われた。
 「それなら映画でなく小説で、自分の中に生まれた物語を形にしようと思いました」
 題材は複数あったが、演劇を巡る物語にした。主人公はベテラン芸能マネジャー加門慶多(かもんけいた)と新人の中村祥子。二人は、大物俳優の引退宣言や若手女優のわがままに振り回されながら、伝説の劇作家に脚本を完成させてもらうべく奔走する。「映画の現場には、おもしろくて熱量がすごいマネジャーさんがたくさんいる。そんな裏方を通じてプロフェッショナリズムを書きたかった」
 最近、「若い人の映画や芝居を見るとよくできていると思うけど、『絶対に見たほうがいい』と誰かにすすめたくなるものが少ない」という。
 加門がある台本を読んで感想を漏らす。「出てくるのは皆褒め言葉ばかりだ。ただ、問題は、その褒め言葉に熱が入らない」。自身の思いがこもる。「一方で僕より前の世代には、映画や演劇で革命を起こせると本気で思っている人たちがいた。そんな熱さへのあこがれがあります」
 小説には、これまで出会った「怪物」の記憶が再現されている。森繁久彌やミヤコ蝶々、山崎努ら圧倒的な存在、妻夫木聡や上野樹里ら驚くべき才能と過ごした時間……。
 「映画の脚本では、生身の俳優がやったら問題になる、大勢の人間がかかわるから許されないなどと歯止めをかけています。小説なら編集者と二人で進められる」。これが初の小説だが、次の物語はもう生まれているという。(太田匡彦)
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 河出書房新社・1728円

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