雨天の盆栽(1) [作]つるかめ

[文]南信長(マンガ解説者)  [掲載]2017年03月05日

表紙画像 著者:つるかめ  出版社:マッグガーデン

■マニアックな世界で見える友情や個性

 前例がなくはないものの、盆栽というテーマを選んだ勇気をまず讃(たた)えたい。
 自分の気持ちを押し殺し友達に合わせることに汲々(きゅうきゅう)としていた女子高生・楓(かえで)が、孤高を貫く才色兼備の盆栽女子・雨宮雨天(あまみやうてん)と知り合ったことで盆栽の世界に惹(ひ)かれていく。
 初心者の楓の目を通して、読者も無理なく盆栽の世界へと導かれる。〈私たちにも自信のある角度があるでしょ? 盆栽も同じ〉といった解説はわかりやすく、〈盆栽家の憧れの品はやっぱり根岸産業の銅の如雨露(じょうろ)ね〉などのマニアックなネタも興味深い。
 空回りしがちな楓、ツンデレの雨天に姫キャラの苔(こけ)マニア・かのんが加わった3人娘の掛け合いは、かしましくもキュート。盆栽の話が友情や信頼、個性のあり方にもつながる。盆栽と対峙(たいじ)する雨天の姿に戦国武将を幻視したり、いきなり本宮ひろ志タッチの妄想を繰り広げたりと、ビジュアル面でも飽きさせない。
 作画はデジタル使用だと思うが、アナログ的生命力を感じる。なかでもイメージ的シーンの手描き感、手間をかけてこそ生まれる豊穣(ほうじょう)さは、盆栽にかける手間とシンクロする。どんなテーマでも工夫次第で面白いマンガになるという見本のような作品だ。
    ◇
 マッグガーデン 648円

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