発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由 [著]栗原類

[文]最相葉月(ノンフィクションライター)  [掲載]2017年03月12日

表紙画像 著者:栗原 類  出版社:KADOKAWA

■「できた」ことをよしとする

 栗原類くん、22歳。イギリス人の父、日本人の母をもち、竹久夢二が描く少女のように儚(はかな)げな目をした面長の美青年だ。パリコレのモデルのほか、タレントや俳優として活躍している。
 類くんが自らの障害をテレビで打ち明けた時、一番驚いたのは芸能界だったと思う。表情に乏しく抑揚のない話しぶりから、当時「ネガティブすぎるイケメンモデル」としてバラエティー番組で人気だった。ところがキャラクターと思われたその言動はADD(注意欠陥障害)の表れだったのだから。診断されたのは8歳。シングルマザーとなった母・泉さんとニューヨークで暮らしている時だった。
 「僕は、小さい頃から、特に物音に敏感でした」。手記はそんな一文で始まる。聴覚過敏の症状だ。保育園では幼児のがなり立てるような声が耐えられず教室を飛び出した。注意力は散漫で忘れ物の常習犯。暗記もののテストは全滅だった。11歳で日本に帰国。中学ではいじめに遭い、受験も失敗。高校時代、「今何時ですか?」と尋ねてようやく友だちができたというエピソードに泣けてくる。
 日本には米国のように充実した支援体制はない。泉さんは類くんにとってのベストを探った。同級生が簡単にできることに何倍もの時間がかかるため、早めにできるのではなく「できた」ことをよしとする。文章を書くことや時間を守ることが苦手なため、スマホやパソコンを存分に使わせる。場の空気が読みづらい時は言葉ではっきり伝えてもらうなど、周囲にあらかじめ障害を説明してトラブルを最小限に抑えた。できる子より、好かれる子。奮闘の末に二人が探り当てた目標地点だ。
 主治医曰(いわ)く、類くんは「スーパー謙虚」「スーパー思いやり」の人。本書で自らを差し出し、障害と共に生きる手がかりを与えてくれたのもまさにそのやさしさゆえだろう。編集スタッフの温かさも随所から伝わってくる。幸せとは何かと考えずにはいられない。
    ◇
 KADOKAWA・1296円=7刷15万部 16年10月刊行。友人の又吉直樹さんの言葉も収録。「発達障害に限らず、子育てに困難を抱える親御さんに読まれている」と担当編集者。

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