MATSUMOTO [作]LF・ボレ [画]フィリップ・ニクルー [訳]原正人

[文]ササキバラ・ゴウ(まんが編集者)  [掲載]2017年03月12日

表紙画像 著者:LF ボレ、フィリップ ニクルー、原 正人  出版社:Graffica Novels

■おかしさに慣れた今、テロ事件の切実

 表紙を見て居心地の悪さを感じた。この絵と題名。なぜ今? しかも翻訳書だ。違和感と、妙な胸さわぎがないまぜになり、引き寄せられるように手に取った。
 物語の中心はオウム真理教の松本サリン事件だ。当時を知る人は今さらと思うのかもしれない。だが近年テロに苦しむフランスから、国際的にテロの嵐が吹き荒れる中、この本はやってきた。海外からの目で改めて向き合わされる一連のできごとは、以前とは違う意味で、切実に「今」に響くものに感じられる。
 オウム真理教が話題となり始めた頃、どう見てもフェイクな主張を振り回す姿に「冗談だろ?」「マジかよ!」と、あっけにとられた気がする。気がついてみたら、今やネットのつぶやきから、日本やアメリカの国家のトップの言動に至るまで、同じことの洪水なのだった。それにももう慣れてきた気さえする。本書は地下鉄サリン事件よりも、そこに至る経緯に着目する。兆候に気づきながら、受けとめきれないこと。流れに逆らえないこと。おかしいと思っても慣れてしまうこと。
 この先、自分はどこまで慣れていくんだろうか。本書を読みながら、そのことが頭を離れなかった。
    ◇
 Graffica Novels 2376円



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著者:LF ボレ、フィリップ ニクルー、原 正人/ 出版社:Graffica Novels/ 発売時期: 2017年02月


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