夢十夜 [漫画]近藤ようこ [原作]夏目漱石

[文]朝山実  [掲載]2017年03月14日

表紙画像 著者:近藤 ようこ、夏目 漱石、夏目 漱石  出版社:岩波書店

 「こんな夢を見た」で始まる短編漫画集。「第三夜」は、盲目の男児を背負い、真っ暗な田舎道をゆく父子の話。「御父さん 重いかい」「重かあない」「今に重くなるよ」。口髭の父親は壮年の文豪の面立ちで、冒頭の何気ない会話がラスト一コマに響いていく。
 漆黒とわずかな純白のコントラストは、何物かから「逃れよう」としていた漱石の内面とリンクし、つげ義春や水木しげるの世界を連想させもする。とりわけ漫画ならではの面白さは最終話。豚の大群との格闘シーンだ。蹴散らせども「大嫌」と公言する豚に迫られ、次第に断崖へ追いやられる。
 近藤は坂口安吾や折口信夫の名作を手がけてきた漫画家で、本作でも原作を忠実に再現しつつ、エッセンスを抽出している。名人が古典落語の十八番を演じるかのような完成度である。

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夢十夜

著者:近藤 ようこ、夏目 漱石、夏目 漱石/ 出版社:岩波書店/ 発売時期: 2017年01月


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