速水健朗の出版時評

書店の未来 文化普及の先に必要なもの

2017年04月02日

「Title」で接客に当たる辻山良雄さん(右)=東京都杉並区

 書店の減少が続く。2000年に2万1654店あった書店数は、16年には約4割減の1万3041(アルメディア調べ)に。書店倒産件数は、昨年1~12月で25件と前年比56・2%の増だった。負債総額は、前年比55・4%増の約53億円(東京商工リサーチ調べ)。負債1億円未満の零細書店が半数以上と「町の小さな本屋」が苦境に置かれている。
 本好きからは「寂しい」という声が上がるが、IT系や経営者の割合が高いネットのニュース共有サービス「ニューズピックス」の記事のコメント欄を見ると、「あぐらをかいてきた。淘汰(とうた)は当然」「書店から危機感を感じない」「電子書籍でいい」と辛辣(しんらつ)な声の方が目立つ。
 小規模書店の経営を可能にした背景には再販売価格維持制度と返本制度がある。価格競争や在庫リスクを負わないという部分で守られてきた。それ以上に店頭に売れ筋商品を並べておけば商売になった時代。だがそれは過去。
 「これまでのやり方では、町の本屋は減る一方」というのは、元リブロ池袋本店マネジャー辻山良雄氏(44)。彼は東京の荻窪に個人経営の本屋「Title」を去年開いた。
 狭い店内の一角にカフェが設けられ、著者イベントも開催。大手書店で培ったノウハウが生きている。わずか15坪の売り場に、こだわりの選書で取りそろえた1万冊以上の本が並ぶ。最寄り駅から徒歩10分の店に引き寄せられる客は絶えない。しかし、ただ個性的な店であることを認知してもらうだけではだめという。
 「本好きに注目してもらうことは大事だが、売り上げは新刊で決まる」という。雑誌やコミック目当てにたまたま立ち寄ったお客さんを逃がさない工夫。棚には『ONE PIECE』の新刊も。
 町の書店は減り続けるのか? 「適正に向かっているのでは?」と辻山さん。
 かつて津々浦々にできた町の本屋は戦後の文化普及の立役者だった。その時代は終わった。これから町の本屋が生き残るには、現代における役割を見つけることが必要だ。

関連記事

ページトップへ戻る