新機軸の物語、私たち世代が

2017年04月30日

(左)やまうち・まりこ 1980年、富山県生まれ。作家。大阪芸術大卒。2008年、女による女のためのR―18文学賞・読者賞。12年、『ここは退屈迎えに来て』で作家デビュー。著書に『かわいい結婚』『あのこは貴族』など。 (右)ジェーン・スー 1973年、東京都生まれ。作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニスト。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のパーソナリティー。著書に『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』など。 <関田航撮影>

 コラムニストのジェーン・スーさんと作家の山内マリコさんが新刊エッセーを相次いで刊行したのを機に、東京・朝日新聞社読者ホールで公開対談した。日頃からご近所づきあいがあるという2人が、結婚や恋愛、男女同権について、刺激的な掛け合いを繰り広げた。

■社会でも家庭でも「個」たれ

 2人が知り合ったのは数年前、山内さんが現在の夫となる男性と結婚すべきか、雑誌の企画でスーさんに相談にいったことがきっかけだったという。その後、スーさんに背中を押された山内さんは結婚。山内さんの『皿洗いするの、どっち?』(マガジンハウス、1296円)は、同棲・結婚を通して感じた家事分担をめぐって夫と繰り広げた「闘争の歴史」をコミカルに描いたエッセー集だ。
 対談では、山内さんが「私のほうが割を食ってるという場面が多くて。女性の社会進出は進んだのに、男性の家庭内進出が進んでいなかったことに気づいた」と切り出した。スーさんは、「『皿洗いするの、どっち?』の答えは食洗機(食器洗い機)ってことです。無理をしてでも導入すべき」と会場を沸かせつつ、「家事のアウトソーシング(外部化)がもう少し進んでもいいのでは。お母さんが出勤前に自転車の後ろと前に子どもを乗せて疾走して、働いて、帰ってきたら家事をして。家庭内人権がないがしろになるような生活をよしとするのはどうかと思う」。
 2人は、「主人」「旦那」という呼称についても、「実はすごい呼び方」(山内さん)「他者の配偶者への呼称も『奥さま』など夫より奥に入っている印象を持つ言葉が一般的で、それでは結婚にびびる人が多くて当たり前ではないかと思う」(スーさん)と疑問を投げかけた。
 スーさんの最新エッセー『今夜もカネで解決だ』(朝日新聞出版、1404円)は、肩こり・腰痛緩和のために、スーさんが日々通ったマッサージの体験記だ。「ただのレビューじゃなくて、働いていると疲れる、ねぎらいがほしい、ということが書きたかった」。「赤の他人にお金を払って、自分を受容してもらった上で癒やしてもらう」ということをつづった本書の最終章では、「女を癒やすのは女」と結論している。
 山内さんは、「シンデレラの継母のいじめにせよ、『女の敵は女』を喜ぶエンターテインメントが多すぎる。そこに抵抗する文化をつくるのが私たちの世代だし、私も小説で書こうとしているのは全部そういうことなんだと思う」。スーさんは、自身が原作を担当したマンガ『未中年』(ナナトエリ画、新潮社、778円)で「若くもかわいくもない女性を主人公にした。そういう物語が他に少なかったから」と明かし、「まだ誰も見たこともないものを出していくことで、徐々に社会の目を慣らす。そういう中から新機軸のカルチャーが出てくるのかも」。
 質疑応答では、参加者から「女性の人権主張の一方で、男性の生きづらさが助長されていないか」との問題提起もあった。
 山内さんは、「その二つは表裏一体。男性は弱音を口にできない風潮があったが、女性に押されて彼らも生きづらさをオープンに出来るようになってきたのでは」。
 スーさんも、問題は「男性が得をする社会」ではなく、「一部の男性が得をする社会」と再定義しつつ、「『私たちの権利が奪われている』という話は、女性同士で話していると興奮してきちゃう。結果的に対話がとりにくい被害者になってしまいがち。個たれ、ということを大事にしたほうがいいと思いますね」と締めくくった。(板垣麻衣子)

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