野村證券第2事業法人部 [著]横尾宣政

2017年05月14日

■バブル期の“稼ぎ方”克明に

 バブル回想本がブームだ。最初に火をつけた『住友銀行秘史』が13万部を突破。『バブル 日本迷走の原点』が4万3千部、『野村證券第2事業法人部』8万部……。1980年代後半から90年代初頭にかけてのバブル期からはや四半世紀がたつというのに、なぜいまごろ?
 『住友銀行〜』は住銀会長を辞任に追い込んだイトマン事件の暴露本。事件摘発につながった内部告発状の送り主である元取締役による回顧録だ。これを追って出版した『野村證券〜』も元幹部の内幕もの。著者はオリンパス粉飾事件で「指南役」として逮捕され一、二審有罪。現在は最高裁に上告中の身だ。
 バブル期の証券界で横行していた回転商い、相場操縦、飛ばし……。違法まがいのえぐいビジネスの実態が臨場感あふれる筆致で描かれる。
 どこまで真実で、どこからが保身や言い訳なのかはっきりしないところもある。
 でも、売れている理由はいくつか考えられる。
 まずバブルへの郷愁。昨今のしょぼい景気を憂えつつ、世界一の経済を謳歌(おうか)したパワフルな時代を懐かしみたい欲求だ。
 はたまた身もふたもない話だが当該企業の社員やOBで盛り上がっているとも考えられる。組織の裏を実名入りであらいざらいぶちまけているのは確かにすごいが、一般読者にはしょせん他社の内輪ネタにすぎない。ただし、別の会社が舞台となった本だったらここまで売れたかどうか。90年代、経済記者の間でささやかれていた「日本最強」の金融再編の組み合わせは〈住友銀行+野村証券〉だった。特ダネ競争のなかでの妄想にすぎないが、えげつないほどやり手でタフな両社をたたえた待望論でもあった。
 それも幻想だったか。虚飾が強さに見えていただけなのか。読み進むにつれ、そう考えた。
 アベノミクスで「バブルよ、もう一度」という現代。反面教師として当時を知りたい若い読者に、うってつけの本である。(原真人=本社編集委員)
    ◇
 講談社・1944円=3刷8万部
 17年2月刊行。著者は54年生まれ。「バブル期の野村證券でいちばん稼いだ男」と帯にあり、当時、会社員だった中高年を中心に広く読まれている。

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