悩んで読むか、読んで悩むか

「もじゃもじゃ」は生命力の源かも 穂村弘さん

2017年05月21日

62年生まれ。歌人。近著に『野良猫を尊敬した日』『穂村弘の、こんなところで。』など。

■相談 散髪嫌がり床屋に行かない息子たち

 小学6年生と3年生の息子が散髪を嫌がり、髪を伸ばし放題にしています。長男は低学年の時はスポーツ刈りほど短くしていたのですが、今は「床屋に絶対に行かない」と言い張ります。次男も兄にならい、同じようにぼさぼさです。私は身だしなみとして髪もきれいに整えてほしいのですが、息子たちをどのように説得して床屋へ行かせればいいでしょうか。
 (兵庫県、パート女性・41歳)

■今週は穂村弘さんが回答します
 そう云(い)えば、と思いついたことがあります。童話や絵本には、昔から髪の毛がぼさぼさだったりもじゃもじゃだったりする子供がよく出てくるんです。『ぼうぼうあたま』『もじゃもじゃ』『もしゃもしゃちゃん』『もじゃもじゃヒュー・シャンプー』等々。その中の一人をご紹介しましょう。
 〈モモの見かけはたしかにいささか異様で、清潔と身だしなみを重んずる人なら、まゆをひそめかねませんでした。(略)生まれてこのかた一度もくしをとおしたことも、はさみを入れたこともなさそうな、くしゃくしゃにもつれたまっ黒なまき毛をしています〉
 ミヒャエル・エンデの童話『モモ』の主人公モモです。表紙に書かれた「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」からもわかるように、彼女は誰にもできないような冒険をやってのけます。でも、変な感想かもしれないけど、もしもモモの髪の毛がきれいに整っていたら、彼女はそんな大活躍はできなかったんじゃないか、と思うんです。
 〈とにかくジジはこのもじゃもじゃ頭の小さな子に、ふかい愛をいだいていたのです〉
 〈「おまえじしんの心の中だ。」とマイスター・ホラは言って、モモのもしゃもしゃの髪をやさしくなでました〉
 「くしゃくしゃ」で「もじゃもじゃ」で「もしゃもしゃ」な髪の毛は、モモの魅力と生命力の源なんじゃないか。他の本の場合も同様で、お話の最後に髪を切ってさっぱりする子も多いけど、でも、最初から身だしなみが良かったら、そもそも彼らは主人公にはなれなかったんじゃないか。
 童話や絵本なら「小学6年生と3年生」でも難しくないし、お母さんと一緒に読むこともできると思います。それから改めて三人で髪の毛と冒険について話し合ってみてはいかがでしょう。お子さんたちは床屋に行ってくれるかもしれないし、逆にお母さんがもじゃもじゃ頭にするのも恰好(かっこう)いいかもしれませんよ。
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 次回は詩人の水無田気流さんが答えます。
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 ■悩み募集
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