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固くなった心にしみてくる

「かたつむりくん ゆっくりだって、いいのよ~ん」

 かたつむりくんの雨の日のおさんぽ。急がず慌てず目的もなく、アクシデントもなんのその。気負わない気ままな時間は、思いがけない新しい風景を見せてくれ、なんだか楽しい。本当はマイペースに生きていきたいけれど、世界はあまりにも目まぐるしくて、自分に向き合うことってあまりできない。なんだか固くなってしまった心に、「ゆっくり」というかたつむりくんの言葉が、じっくりじんわり、しみてくる。
 絵本のページを開いて、肩ひじ張らず、ほっと息をつく。ああ、至福。ものすごく忙しい日常を過ごす子どもたちに。仕事や育児に追われる大人たちに。自分のことをゆったり見つめて、また、よいしょと前に進める力を養いましょう。(丸善丸の内本店・児童書担当 兼森理恵)
 ★かとうまふみ作、風濤社、税抜き1400円、4歳から

「アルバートさんと赤ちゃんアザラシ」

 店を売って生きがいをなくしていたアルバートさんが、海で、親を亡くしたアザラシの赤ちゃんに出会う。このままでは死んでしまうと連れ帰ることに。でも、アパートはペット禁止で、うるさい管理人もいる。動物園で飼ってもらうもくろみもはずれ、さあ困った。作者の父親の実体験をもとにしたお話で、絵も楽しい。(翻訳家 さくまゆみこ)
 ★ジュディス・カー作・絵、三原泉訳、徳間書店、税抜き1400円、小学校中学年から

「ひらけ蘭学のとびら」

 杉田玄白の「解体新書」が、江戸時代にどのようにして世に送り出されたのかを知ることができるだけでなく、蘭方医(らんぽうい)たちの不屈の精神とその情熱に心が動かされる物語。父と同じ医者になった玄白は、人体のふしぎを解き明かすために、ことばも知らないままオランダの医学書の翻訳にチャレンジしていく。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫)
 ★鳴海風著、関屋敏隆画、岩崎書店、税抜き1500円、小学校高学年から=朝日新聞2017年6月24日掲載