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ブラタモリ(1)〜(8) [監修]NHK「ブラタモリ」制作班

2017年07月09日

■いつも同じ、ブレないのだ

 キーワードは高齢社会と健康寿命の二つか。JR東日本(のCM)の吉永小百合が旅するおば(あ)さんの理想像なら、NHKブラタモリのタモリはなんだろう。こちらは、好奇心と健脚のおもむくまま、かたときもじっとしていることのない、昨今の多動型おじ(い)さんの本家・家元・名人なのである。
 吉永の旅には基本、連れ合いの影がないが、これはタモリも同様。かわりにいつも横にいるのが若い娘で、しかもこれが(うちの老妻と違って)目を輝かせてこちらの話を聞いてくれる。男の生の最後に一つ残った「教えたがり」欲求に身を灼(や)く同世代には、見果てぬ夢だろう。
 書籍版の『ブラタモリ』はシリーズの(8)までが現在発売中。その売り上げが別掲のような数字になるのもうなずける。
 ところで、最新刊でご一行がブラつくのは横浜、横須賀、会津、会津磐梯山、そして高尾山の各地。なにか新しいことでもしているのかと思って(1)〜(7)も参照してみたが、いつもと同じ。違うのは、表紙に並ぶ地名とオマケにつくタモリ似顔絵ステッカーのデザインくらいか。
 だが、このいつも同じというのがブレないタモリ流なのである。この間、テレビ各局は、誰におもねってか「ニッポン、こんなにスゴい!」式の自画自賛番組を乱発してきたが、タモリはこれにくみしない。驚きと称賛の対象は個別のモノやコト。「逆サイフォンの原理を応用した給水システム」(横浜)や「残存する鉄道橋脚のナゾ」(高尾山)であって、ニッポンではない。
 ところが(7)と(8)の「帯」を見るとどうだろう。これまで「街あるき決定版!」だったコピーが、「日本を再発見!」に変わっている。これ、NHKのご意向?
 まずいぞタモリ、目をさましてくれ。やきもきするのはタモリ倶楽部(テレ朝系、今年で35年)一筋のファン(私も?)たちである。あの番組は鉄オタから地図・地形マニアまでみんなこちらのパクリ。ブラタモリはコピー商品だと息巻くのだが。
 (山口文憲=エッセイスト)
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 KADOKAWA 昨年7月に(1)(2)が刊行され、現在は(8)まで出ている。各1512円。シリーズ累計71万部。初版限定でタモリの特製ステッカーつき。ロケの裏話なども収録。



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