悩んで読むか、読んで悩むか

ひとは誰でも孤独に挑んでいる 壇蜜さん

2017年07月23日

80年生まれ。テレビ・ラジオなどで活躍。エッセーや初の短編小説を収めた『泣くなら、ひとり』など。

相談 フリーの彼の考えを尊重して欲しい

 私のパートナーはフリーランスのデザイナーです。彼の家族は会社員など安定した職業についているので彼のことを「しっかりしていない」「考えが甘い」と、本人が決めたことを応援してくれません。フリーだとしても、会社員だとしても、経営者だとしても、考えを尊重しあえる関係を築くため彼の家族に本を薦めるとすれば、どんな本が良いでしょうか。(茨城県、カウンセラー女性・29歳)

今週は壇蜜さんが回答します

 相談者さまには、『はじめてのおつかい』をおすすめいたします。5歳になったみいちゃんが、お母さんにお願いをされ、生まれて初めて1人で買い物に行くという内容の絵本です。スマホもナビも普及していない時代に、100円玉2枚を握りしめ、果敢にミッションに立ち向かうみいちゃん。道中思わぬアクシデントや孤独、見知らぬものへの恐怖に見舞われながらも買い物を遂行させる気概に釘付けです。読後、人間は本来誰でも困難を乗り越えようとする力を持っていることが分かるでしょう。才能や素質からどうこうなるというものではなく、「経験」と向き合うことで対抗力は更に強くなる……とも。かつては皆「みいちゃん」だったのです。
 パートナーのご両親は相談者さまから「おとうさん、おかあさん」と呼ばれるような関係になっているでしょう。しかしこの縁、結ばれたとはいえまだまだ馴染(なじ)みきるまでには時間が必要です。そんな相談者さまが「パートナーのご両親なりに考える勤労スタイルの正義と悪」を覆そうと説得に身を乗り出すのはいささか頑張りすぎな気がするのです。これからもっと縁が深まる可能性のある義理のご両親に正面から「フリーランスだっていいじゃない」と伝え、フリーランス大活躍の漫画や絵本を薦めるのは得策ではありません。「しっかりしていない」というフリーランスへの頑(かたく)なな思いはかえって強固になるでしょう。紹介された本は当事者のパートナーのエピソードではなく「本は本。自分の子供は自分の子供」と解釈するでしょうから。
 相談者さまも、パートナーも、そのご両親も、皆昔は「みいちゃん」だったことを思い出してください。教育を終え、単身外に出た時点で社会とのつながりは始まっているのです。予見不可、孤独必須はどの立場でも所属でも仕事内容でも共通しています。すぐにパートナーの仕事を理解し応援してもらうことはできなくても、皆でみいちゃんに戻って、「そうだ、皆挑んでいるんだ」という事実を共有してみてはいかがでしょう。
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 次回は作家の山本一力さんが答えます。
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 ■悩み募集
住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。壇蜜さんと山本さん以外の回答者は次の通り(敬称略)。石田純一(俳優)、荻上チキ(評論家)、斎藤環(精神科医)、穂村弘(歌人)、三浦しをん(作家)、水無田気流(詩人)、吉田伸子(書評家)。

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