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早良朋「へんなものみっけ!」 “好き”を極める、研究者の奇妙な生態

へんなものみっけ!(1) [作]早良朋

 ベストセラー『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(川上和人/新潮社)を読んだ人にはこの本もおすすめ。ってどこかの通販サイトみたいだが、研究者の奇妙な生態を描き、調査研究の意義を説くなど共通点は多い。
 舞台は、とある地方都市の博物館。展示は地味で来館者も少ない。が、市役所から出向してきた青年にとって、そこは驚きの異世界だった。
 バックヤードに保管された大量の標本、冷凍庫にぎゅう詰めの動物の死体、交通事故で死にたてほやほやのカモシカを喜々として解剖する謎の女……。〈博物館てこんなこともやってんのか〉と驚き、その女性が斯界(しかい)で有名な鳥類学者と知ってまた驚く。
 丸5日も森の中でフクロウの巣立ちを見張る彼女を筆頭に(市役所的基準で見れば)変人ぞろいの研究員たちに翻弄(ほんろう)されながら、“好き”を極めた生き方に憧憬(しょうけい)と畏敬(いけい)を抱く。そんな彼の素朴な視点で博物館の裏側を活写する。
 登場する動物たちはかわいく、研究者が語るうんちくも楽しい。鳥類だけでなく海生動物や植物の話題もあり、まさに博物学的。多様性や社会教育、職業選択についても示唆に富む。青少年の夏休みの課題図書にもぴったりだ。=朝日新聞2017年8月13日掲載