悩んで読むか、読んで悩むか

恐怖増し増し、超弩級がございます 吉田伸子さん

2017年08月13日

61年生まれ。書評家。「本の雑誌」の編集者を経てフリーに。著書に『恋愛のススメ』。

相談 猛暑を涼しく過ごせるホラー小説を

 昨年、夏の終わりにエアコンが壊れました。なんとか乗り越えましたが、今年の夏もまた暑く、修理をするにもお金がかかるので悩んでいます。少しでも涼しく過ごせるように、ぞくぞくするホラー小説を教えてください。できれば、お化けや幽霊が登場する本格的なホラーをお願いします。怖ければ怖いほどうれしいです。(埼玉県、家事手伝い、女性・29歳)

今週は吉田伸子さんが回答します

 エアコン、壊れるんですよね、一番必要な夏場に。おっとり刀で家電量販店に駆けつけるも、エアコンそのものの在庫がなかったり(安くて性能の良いものは売り切れている)、在庫はあるものの、取り付け工事が最短で一週間先だったり(この時点で白目になる)。冬場だと価格も安いし(型落ち製品が狙い目)、工事もすぐ来てもらえるんですが。私は密(ひそ)かに、エアコンには夏場に寿命が来るような呪いがかけられているのでは、と疑っております。
 さてさて、ご相談は夏でも涼しく過ごせるような、ぞくぞくするホラー小説をとのことですが、ございます! ひと夏涼しく過ごせるどころか、読了後何年たっても怖い、という超弩(ど)級のホラーが。それは、小野不由美『残穢(ざんえ)』です。どうです、字面からして怖くないですか。
 主人公は怖い話を収集している作家の“私”。その私に、読者から手紙が寄せられる。自宅で仕事をしていると、開け放った背後の和室(寝室)から、畳を掃くような音が聞こえるのだ、と。ある時、思いきって振り返ってみると、着物の帯のようなものが見えた、と。
 “私”は、この相談と似たような話があったことを思い出す。調べてみると、確かに同じ悩みを寄せてくれた屋嶋さんという読者がいた。そして、その屋嶋さんと、件の読者は部屋の階数こそちがえ、同じマンションに住んでいたことが判明する。
 あぁ、ここで読むのを止(や)めておけばよかった、と何度思ったことか。それぐらい怖いのです、この先の展開が! でも、あまりに怖いので、途中で止めることができなかったのでした。そして、読了後しばらくの間、家に一人でいる時、何度も後ろを振り返ってしまった、という。
 “音”の正体は何なのか、着物はどう関係しているのか。明らかになって行くほどに、恐怖が増し増し。これから読まれる方の興を削(そ)ぐので、詳しくは書きませんが、キーワードは、「土地の穢(けが)れ」です。わ〜〜、逃げ場なし! 体感温度が一気に下がること、保証します。
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 次回は評論家の荻上チキさんが答えます。
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 ■悩み募集
住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。吉田さんと荻上さん以外の回答者は次の通り(敬称略)。石田純一(俳優)、斎藤環(精神科医)、壇蜜(タレント)、穂村弘(歌人)、三浦しをん(作家)、水無田気流(詩人)、山本一力(作家)。

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