話題の新刊(週刊朝日)

長夜の眠り―釈迢空の一首鑑賞 [著]秋山佐和子

2017年08月29日

 難しいと言われがちな釈迢空の短歌を身近に感じられるよう、孫弟子の歌人が代表歌を含めて自由に鑑賞する。
「青山と 高断り岸の 彼方は波──。村あればかならず 汽車とまるなり」。昭和5年晩夏の、東北への旅の終盤。「汽車は、集落が見えるとかならず小駅に止まるのであるなあ」とそれだけで心が動く。
「山びとの 言ひ行くことのかそけさよ。きその夜、鹿の 峰をわたりし」。年の暮れ、山びとがひっそりと言うのを小耳にはさんだ。昨夜、鹿が峰をわたって行った、と。
 奥深い山境に、まるで異郷からやってくる客人のような、神聖な一頭ではなかったか。「読後、はるかな時間を感じ、自分の身のうちに折り畳まれた古い祖たちの姿へと還っていくような感覚を覚える」。茂吉との歌風の違いを読み解く論考もいい。 (西條博子)

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