悩んで読むか、読んで悩むか

いつか笑って、語り合えるように 水無田気流さん

2017年09月10日

みなした・きりう 70年生まれ。社会学者、詩人。『「居場所」のない男、「時間」がない女』など。

■相談 スレ違いの親子関係を修復したい

 高校3年生の娘がいます。ずっとおとなしい性格の子でした。しかし、中学の頃に自我に目覚めたのか、言いたいことをずけずけ言ってくるようになりました。それも成長だと思い接してきましたが、親子関係が修復できないまま、日々を過ごしています。もうすぐ進路を決めるとき! スレ違いに区切りをつけたいです。
 (山口県、主婦・43歳)

■今週は水無田気流さんが回答します

 おつらいでしょうけれども、高校生の娘さんは、母親とすれ違って当たり前だと思うのです。だって、違う人間だもの(すいません)。おそらく娘さんは、ご相談者さまの前では不機嫌さを隠さないのではないでしょうか。いいんです。だって、思春期だもの。もう子どもではなく、かといってまだ大人のように「他人に不機嫌な顔を見せないようにすること」も出来ない思春期の子どもにとって、家族は「感情を隠さなくてもいい避難所」のようなものだと思うのです。この点、真正面から書いているのは、伊藤比呂美『伊藤ふきげん製作所』(毎日新聞社・品切れ)です。まずは、思春期の子どもの生態をご確認下さい。もう少し客観的な分析が欲しいのであれば、斎藤環『母は娘の人生を支配する』(NHK出版・994円)がお薦めです。母が娘を無自覚に支配してしまう構造を分析しています。子どもが成長すると、家庭の中にどんどん「社会」が入ってきて、親子関係も変わらざるを得ません。その中でも、母娘関係の難しさは格別なのだということを理解した上で、娘さんと接してはいかがでしょうか。
 つらい本ばかりをあげてしまったので、おしまいにもっと俯瞰(ふかん)的な本を。『ちいさなあなたへ』です。絵本で言葉は少ないですが、赤ちゃんだった娘が成長し、楽しいことや悲しいこと、ときに危険なことも経験し、大人になり、母は娘が「せいいっぱい てを ふりながら しだいに とおざかっていく」のを見送り、娘はやがて親になり、年老いて……という命の営みが描かれ、どの年齢のどの立場からも感情移入できます。
 個人的なことで恐縮ですが、私の母は、私が大学を卒業してすぐ48歳で亡くなりました。今、親になってみてはじめて、母の気持ちが分かったことも多々あります。来年、私は母が亡くなった歳(とし)になります。話したいことは、たくさんありました。どうぞ相談者さまは、いつの日か年をとった娘さんと、今の思い出なども笑いながら語り合えますように。心より、お祈り申し上げます。
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 次回は作家の三浦しをんさんが答えます。
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 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。水無田さんと三浦さん以外の回答者は次の通り(敬称略)。石田純一(俳優)、荻上チキ(評論家)、斎藤環(精神科医)、壇蜜(タレント)、穂村弘(歌人)、山本一力(作家)、吉田伸子(書評家)。

ちいさなあなたへ (主婦の友はじめてブックシリーズ)

著者:アリスン・マギー、ピーター・レイノルズ、なかがわ ちひろ
出版社:主婦の友社

表紙画像

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