悩んで読むか、読んで悩むか

しぶとく冷静に「おかしい」と表明 三浦しをんさん

2017年09月17日

三浦しをん 76年生まれ。作家。『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞。ルポエッセー『ぐるぐる●(●はハートマーク)博物館』など。

■相談 ひどい女性差別がやりきれない

 周囲の人や政治家の女性蔑視、男性中心主義的な言動に憤りを覚えています。「女の子なんだから○○すべきだ」という言葉にいらだつのはもちろん、婚姻したら何の疑問もなく男性側の名字を選ぶ人にも納得できません。国会で女性議員に汚いヤジを飛ばすオジサンを見ると不愉快になります。社会に出たらますますひどい女性差別があるのかと思うとやりきれません。
 (京都市、学生女性・20歳)

■今週は三浦しをんさんが回答します

 お気持ちはよくわかりますが、そう悲観なさらずに。性別や世代を問わず、差別的でも抑圧的でもないひとだってたくさんいます。
 私は、身近なひとの差別的言動(性差別に限らず)については、「それはおかしいと思う。なぜなら」と自分の考えを明らかにし、相手と話しあうようにしていますが、政治家に対しては、「『それって差別だよね』と言ってくれる友人も家族も側近もいないんだな」と遠くから憐(あわ)れみの思念を送りつつ、「そいつには票を投じない」一択です。
 生物学上の性別(あるいは個々人の性自認)を、男女にきっぱり二分できるといまだに思っているのは、科学的知見の欠如であると同時に社会の実相への認識不足ですし、にもかかわらず人類を男女に分けて、「男として(または女として)望ましい振る舞い」とやらを要求するのは、血液型占いよりも分類項の少ない非論理的な思考です。政治家に向いてません。
 個人的には、法律で定められた年齢に達していれば、性別や性指向を問わず結婚の合意ができた相手とすればいいし、夫婦別姓を選択したいひとはすればいい、という社会の到来を切に願います。多様な人々が多様なままに生きられるよう、多様な選択肢が存在し、自由に選べる。それが息のしやすい社会というものではないかと思うからです。
 私も女性差別に対して相当イラッとするほうですが、怒りで公正さを失ってはならないと言い聞かせてもいます。「自分もなんらかの形で他者を差別したり、抑圧したりする言動をしていないか」を検証しつつ、おかしいと感じたことには「おかしい」と表明しつづける。希望を持って、しぶとく冷静に、実践と自身に対する検証をしていくつもりです。
 『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』をぜひどうぞ。前言を翻すようですが、「怒り上等じゃ! わからんちんの頭はカチ割ったる!(実行はしないでください)」という気持ちになるとともに、先人の熱き戦いに大いに勇気づけられます。
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 次回は歌人の穂村弘さんが答えます。
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 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。三浦さんと穂村さん以外の回答者は次の通り(敬称略)。石田純一(俳優)、荻上チキ(評論家)、斎藤環(精神科医)、壇蜜(タレント)、水無田気流(詩人)、山本一力(作家)、吉田伸子(書評家)。

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