作家LIVE

ファンタジーって自由だ 萩尾望都×森見登美彦対談

2017年09月24日

はぎお・もと 1949年福岡県大牟田市生まれ。69年に「ルルとミミ」でデビュー。2006年に『バルバラ異界』で日本SF大賞を受賞。ほか12年に紫綬褒章、17年に朝日賞を受けた。

もりみ・とみひこ 1979年奈良県生駒市生まれ。2003年に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。10年に『ペンギン・ハイウェイ』で日本SF大賞を受賞。=いずれも滝沢美穂子撮影

 マンガ家・萩尾望都さんのSF作品に焦点を絞った「萩尾望都SF原画展」(朝日新聞社など主催)の開幕にあわせ、萩尾さんと作家・森見登美彦さんの対談イベントが9日、神戸市の神戸ゆかりの美術館であった。『11人いる!』や『スター・レッド』など数々の名作で知られる萩尾さんと、ユーモラスな空想に満ちた作品で人気の森見さんが、お互いの作品やSF観について語り合った。

■「良い子」の呪縛なく、何でも書ける
 対談は、萩尾さんが森見さんを対談相手に指名したことで実現した。森見さんの『ペンギン・ハイウェイ』が好きで、文庫解説も寄せた萩尾さんは「森見さんの小説を読んでいると、言葉のリズムに音楽的なものを感じて。落ちぶれた長屋で暮らす人の話を書いていても、近郊のどこにでもありそうな新興住宅を書いていても、なんとなく19世紀のウィーンとか、シュトラウスやシューベルトとか、品の良いイメージの音楽を感じるんですよね」と語った。
 森見さんは「初めて言われた」と驚きつつ、「大正から昭和初期ぐらいの本を学生のときによく読んでまして、文章の書き方やリズムのつかまえ方はそういう、ちょっと前の時代の人たちに影響されてるのかなと思います」と返答。萩尾さんは「昭和モダンとか、そういうテイストも入ってるんですかね。おしゃれな感じがとても好きです」と話した。
 森見さんの萩尾作品との出会いは高校生のころ、入院中の母親におばが差し入れた『11人いる!』を借りたのがきっかけだった。その後、大学時代に『トーマの心臓』『ポーの一族』を読んで衝撃を受けたという。「きれいな作品で、美しいのに、ボロボロの4畳半で本棚にもたれながら読んでいるっていうのが僕の中では結びついてしまっていて。すごい懐かしいんです」と会場の笑いを誘った。
 ともに日本SF大賞を受賞した2人だが、対談ではSF観のギャップも話題に。萩尾さんは小学生の頃に学校の図書室で少年少女向けのSF小説を読み、「現実とファンタジーとのあいだを行ったり来たりする感覚にものすごく魅せられてしまって」と回想。「最近読んだSF」としてアン・レッキーの『叛逆(はんぎゃく)航路』など、お気に入りの十数作をあげた。
 一方の森見さんは「僕らが子どものときには、上の世代の方々が作ったSF的なイメージが、アニメやマンガなど身の回りのフィクションに普通に入っていた」と振り返った。自作『四畳半神話大系』は並行世界の物語だが、「そもそも面白いなと思ったのは『ドラえもん』とかで刷り込まれてるからだと思うんですよね」。
 その上で、「僕の場合はSFというより、ファンタジーって言った方が楽になる。そこに行けば自由に何でも書けると思ったから日本ファンタジーノベル大賞に応募したので。萩尾さんにとってのSFも、そういう感じのものだったのかなと思います」と語った。
 萩尾さんは「私たちが生きてるこの世界は、世間の基準に合うように、ちゃんと良い子に育ちなさいと学校からも大人からも教育される。それはそれで大切なことですけど、そこから逃れたい気持ちもすごくたくさんあって。本当にここだけなの?世界ってここしかないの?っていうときに、SFやファンタジーが自分にとってすごい救いになる」と話した。(山崎聡)
    ◇
 「萩尾望都SF原画展」は神戸市東灘区の神戸ゆかりの美術館(078・858・1520)で11月5日まで。静岡県三島市、北九州市にも巡回する。

関連記事

ページトップへ戻る