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「妖怪ギガ」 人間を映す鏡、ユーモラスに

妖怪ギガ [作]佐藤さつき

 直球勝負の「妖怪まんが」が登場した。毎回短いページ数で、いろいろな妖怪をとりあげ、ちょっと不気味だがユーモラスなタッチで、そのたたずまいが描かれる。
 妖怪ものというと、娯楽作品として盛り上げるためにホラー風味を強めたり、モンスター退治風のアクションものにしたりするなど、おおげさな趣向をこらすケースも多いが、この作品の主役はあくまでも、地味な妖怪たちだ。天狗(てんぐ)、袖引き小僧、まくらがえしなど、伝承的な物の怪(け)たちのありさまを、日常を舞台に描き連ねていく。
 妖怪のエピソードは、どこまでも人間くさい。愛嬌(あいきょう)ある妖怪たちの姿に思わず微笑(ほほえ)みながらも、人の心の迷いや、願望、欲求、執着などが、さりげなく浮き彫りになり印象的だ。妖怪というのは人間を映す鏡なのだ、と改めて思わされる。
 タイトルにギガ(戯画)とあるように、画にも力が入っている。迫力ある緻密(ちみつ)な妖怪描写の一方、作品全体にどこか間の抜けたムードが漂うのは、この分野を代表する水木しげるの作風に通ずるものも感じさせる。絵柄は今風だが、その衣鉢を継ぐつもりで、長く続けていってほしいシリーズだ。=朝日新聞2017年10月15日掲載