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「ユニクロ潜入一年」 安価な衣類生み出す労働の実態

ユニクロ潜入一年 [著]横田増生

 工場や企業に勤めて記す潜入取材。アマゾン、ヤマト運輸などの現場に潜入してきた著者が、今回1年かけて入り込んだのがユニクロだった。
 同社は安価な衣類で人気を博す一方、サービス残業や長時間労働など労働問題はかねて指摘されてきた。著者は問題を早くから指摘し、記事を載せた出版社が同社から名誉毀損(きそん)で訴えられたこともある(最高裁の上告棄却で出版社が勝訴)。今回著者は身元を隠すため、合法的に姓まで変えて同社の店舗で働いた。
 働きだすとすぐに問題は露見。限界まで人件費を削りつつ、人手が足りなくなるといまいる人材にLINEで執拗(しつよう)に出勤要請を繰り返したり、学生アルバイトに「途中で辞めるのは契約違反」と威圧して長時間働かせたり。現場は疲弊するばかりだが、管理側の社員は社長の主張する売り上げしか関心がない。そんな内部の様子を著者は「やりがい搾取」ではないかと疑う。
 著者は海外の工場にも向かい、違法労働の声に耳を傾ける。ひどい実態を描き、身元がばれるスリルを感じつつ、現場では勤務になじむ自分も発見する。社長こそ現場に潜入すべきだと促す著者の冷静さとユーモアもあり、読後感がいいのも本書の良さだ。=朝日新聞2017年11月5日掲載