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『「富士そば」は、なぜアルバイトにボーナスを出すのか』 従業員が意欲出すには、考える経営者

「富士そば」は、なぜアルバイトにボーナスを出すのか [著]丹道夫

 著者は首都圏中心の立ち食いそばチェーン店会長。郷里の愛媛県で、後妻の連れ子として辛(つら)い少年時代を過ごし、15歳から八百屋、油屋などで働いて上京。その後、炭鉱で働き、定時制高校を卒業。不動産業や水商売を経て、36歳で立ち食いそば店の経営に専念。130店舗を超えるチェーン店へと育て上げる。そんな自伝と経営論を合わせたのが本書だ。
 経営者の仕事は「どうしたら従業員の意欲が出て、働きやすくなるか」を考えること。特に店と店長がかみ合っているかを重視。店には立地ごとの特徴があり、ある店ではぱっとしなかった店長が、別の店に移ると大活躍する。一時の数字だけで単純に判断はできないという。
 一方、「立ち食いそば屋は(不動産)物件がすべて」とし、常務には「二年に一件は出店先にふさわしい物件を獲得」というノルマを課す。周辺環境は、繁忙期と閑散期の落差がある大学や遊園地などは駄目で、サラリーマンが常時集まるビジネス街は良し。すると黒っぽいスーツが多くなるので、通行人の印象が黒いほど出店は成功する。また店舗従業員にマニュアルはなく、それぞれのやり方に任せるという。=朝日新聞2017年12月10日掲載