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「行動経済学まんが―ヘンテコノミクス」書評 我々の不合理な活動、漫画で解明

行動経済学まんが―ヘンテコノミクス [原作]佐藤雅彦、菅俊一 [画]高橋秀明

 行動経済学の研究者・セイラー教授のノーベル賞受賞を受け、書店には関連書コーナーが設けられている。なかでも異彩を放つのが本書だ。
 人は「合理的な経済行動をする」と考えるのが従来の経済学だが、実のところ我々はそれほど単純ではない。ただの1万円札より亡き祖母にもらった500円札に高い価値を感じる——そんな不合理な側面を解き明かす行動経済学の要点を、漫画という表現を使ってわかりやすく伝える。
 本書を手がけたのは行動経済学に魅了されたクリエーターたちである。“行動経済学を背景にしたサザエさん”を目指したせいだろう、よくある漫画版ビジネス書とは違い、画風もかなり独特で昭和の匂いがぷんぷんする。
 日常を題材にした23編の漫画に、理解を深めるための解説が付く構成。偽薬でも本物だと信じて飲めば効き目がある「プラセボ効果」の説明の後、それを利用した商品(介護用の偽薬)の紹介コラムが入るなど盛り沢山(だくさん)で、入門書として完成度が高い。「成功率80%の手術」を「死亡率20%」に言い換えると急にリスキーに感じるといった事例にハッとする人も多いのでは。まさに「人間とは、かくもヘンテコな生きものなり」。=朝日新聞2018年1月7日掲載