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篠原ウミハル「鬼踊れ!!」 民俗芸能、未知との遭遇に心が躍る

鬼踊れ!!(1) [作]篠原ウミハル

 競技かるたを題材に大ヒットした『ちはやふる』以降、俳句、和太鼓、箏曲、クイズなど、文化系マイナー部活を扱った作品がいくつも登場している。本作もそのひとつ。テーマは民俗芸能だ。
 都内の高校に赴任した新人男性教師が、定年間近の指導教員から新設予定の民俗芸能部の顧問を頼まれる。何の知識もない彼だったが、一人の女子生徒が踊る鬼剣舞(おにけんばい)(岩手県に伝わる郷土芸能)の迫力と美しさに魅せられ、引き受けることに。しかし、当の女子生徒は「部活なんていらない!」と迷惑顔で……。
 部員集めのドタバタ、メンバー同士の温度差、衝突と和解、初心者への解説など、マイナー部活ものの基本はきっちり踏襲。一方、本来の主人公たる女子生徒ではなく、教師視点で描かれているのが斬新だ。一般企業からの転職組でワケありな感じの成人男性を語り手とすることで、青春の輝きだけにとどまらぬ重層的な物語を予感させる。
 ページのめくりや大ゴマを効果的に使った画面、個性明確なキャラ、テンポのいい会話で飽きさせない。「民俗芸能を知らない奴(やつ)のためにあるのが民俗芸能部なんじゃないか?」とのセリフどおり、未知との遭遇に心が躍る。=朝日新聞2018年1月14日掲載