速水健朗の出版時評

縮小続く出版市場 漫画の大幅減で正念場

2018年02月04日

三省堂書店神保町本店のコミック売り場。約3万点、5万冊が並ぶ=東京都千代田区

 出版科学研究所の発表による昨年の紙の出版物の推定販売金額は1兆3701億円。前年比6・9%減である。
 出版市場の縮小は今に始まったものではないが、内訳では漫画単行本の13%減という数字が目立つ。大手版元にとっては収益の要である分野の大幅縮小がついにきたのだ。
 消費者のコミック離れとも言い切れない。背景には無料で人気作品が読める海賊版サイトの影響も指摘される(日経新聞1月26日朝刊「出版、砦〈とりで〉のマンガ沈む ネット海賊版横行」)。違法サイト撲滅には業界をあげた対策も必要だが、海外にサーバーが置かれるサイトの摘発には時間もかかる。一方で、業界の縮小が速く進むのであれば、苦しい“撤退戦”となる可能性もある。違法サイトとの共倒れは避けたいところ。
 出版のマスメディアとしての立ち位置は、流通の規模によって生まれている。減りつつあるとは言え、全国1万2500の書店に商品が並ぶ。その流通を支える小売り、取り次ぎ、輸送を支えてきたのが漫画単行本や漫画雑誌の大量流通だった。
 出版科学研究所のデータを見ると、昨年の売り上げでは、書籍の売り上げ減は少なく、文芸書、学習参考書、教養新書は前年を上回っている。そもそも漫画が市場の大勢を占める出版市場は、日本特有のものでもある。だが、それが出版流通を築き上げてきた部分も無視できない。
 現状、出版社同士は刊行点数争いを繰り広げ、書店の書棚の面積を奪い合っている状況。パイが減っていく中での苦しい椅子取りゲームだ。だが、その先にあるネット(ほぼスマホである)のコンテンツ市場は、まったくルールは異なる。作家と消費者が直接つながる世界。その環境では、出版業界が“マスメディア”であることをそのまま維持することはできないだろう。
 紙と電子の合計売り上げを見れば、出版全体の規模は維持されていると言われてきた。だが、昨年は合計数でも1兆5916億円で前年比4・2%減となった。正念場はこれから。

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