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大人の科学マガジン―小さな活版印刷機 [編]大人の科学マガジン編集部

2018年02月25日

■凹凸にうっとり、手間が形に

 ここ数年、活版印刷が人気だ。
凹凸のある、味わい深い名刺をいただくことも多くなった。この組み立て式の卓上活版印刷機が付録についたムックも、大変話題になっている。活版印刷の歴史や今の状況を冊子で知り、こちらも人気の「活版印刷三日月堂」書き下ろし短編を読み、実際に自分の手で印刷機を組み立てて遊ぶことができる。過不足なく好奇心を満たしてくれる良い構成。わたしもSNSで刊行を知り、本屋さんに走った。
 活版印刷は、木や金属で作った活字を組み、それにインクを塗って紙に押しつけて印刷する。現在はフィルムに文字を写す写真植字、デジタル製版にすっかり取って代わられた往事の技術のはずだが、今また人気を集めている。活版印刷の魅力はどこにあるのか。素朴な味わい、作り手の個性、ノスタルジー、制約があるからこそ面白いデザイン?それを確かめるために、さっそくキットを開封する。評者はプラモデルを趣味としていることもあり、組み立て自体にはさほど苦労はなかった。ドライバーもついているし、各パーツが半透明なので構造がわかりやすい。模型に親しんでいない人にも容易だと思う。
 以前、活版印刷所で見せて貰(もら)った手キン(手フート印刷機)のひ孫のような、可愛らしい印刷機が出来上がった。何を刷ろうかワクワク考え、やはり最初は自分の名前にチャレンジすることに。活字台にゴムの活字を並べ、水で濃度を調整しつつインキを馴染(なじ)ませ、紙をセットして、ぐっと押し込む。おお、できた! 凹凸を伴った文字が紙の上に整列している様にうっとり。もう少し文字の間隔を調整してみよう、言葉も足して、インクも違う色がいいかな。夢中になって遊んでいるうちに、あっという間に時間がたっていた。机の上は紙だらけ、手はインクで色とりどり。苦笑しながらも、そうか活版印刷の魅力はこれか、と思った。時間と手間が形となって表れる、ものを作る喜びをあなたもぜひ。
 池澤春菜(声優・コラムニスト)
    ◇
 学研・3780円=3刷7万部 17年12月刊行。03年4月に創刊した「大人の科学マガジン」シリーズの45冊目。SNSで話題になり、発売前の段階で増刷が決まった。

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