築地本マルシェ

「子どもたちは大人」五島夕夏さん、絵本を語る

2018年03月09日

五島夕夏さん

五島夕夏さん

五島夕夏さんの講演

 キュートな笑顔とセンスあふれる写真でインスタグラマーとしても人気のイラストレーターであり、絵本作家の五島夕夏さん。講演では、子どもの頃から「大好き」という絵本の魅力をたっぷりと語った。
 幼い頃から、母親が絵本好きということもあり、絵本が身近だったという五島さん。文字が読めるようになってからも、絵本を愛し、「活字の本よりも絵本を読んでいた」と話す。そんな五島さんが絵本作家としてデビューしたのは、2017年2月。『よんでみよう』(岩崎書店)という赤ちゃんから幼児向けの絵本だ。

 「いろいろな動物が背中を向けていて、お子さんがお母さんと一緒に絵本に向かって呼ぶと、振り返ってくれるというストーリーです」 2作目に五島さんが出版した絵本は、『レ・ミゼラブル 前編』(岩崎書店)。ヴィクトル・ユーゴーの名作を絵本化、人物が動物になって登場するユニークな作品だ。
 「子どもからお年寄りまで、いくつの方でも読める絵本だと思います。じつは私、原作を初めて読んだんです。ずっと絵本ばかり読んできて、活字の本に触れていなかったので、読みこなすのが難しかったです」
 根気よく読み進めるうちに、五島さんは『レ・ミゼラブル』に魅せられていった。日本の昔話などでは、悪い人もやさしい心を持っていたり、グレーな性格で描かれていることが多い。ところが、『レ・ミゼラブル』では善人、悪人がはっきりと分かれている。
「今とは時代も国も違うけど、リアルなお話だなと思いました。人生をきちんと表現してくれる物語だと思ったんです」 

 五島さんは、具体的に説明するため、『レ・ミゼラブル 前編』のページをめくり始めた。余白をたっぷりととったのは、物語を遠くからのぞいているような気持ちになって読んで欲しいという狙いがあった。また、登場人物がすべて横顔で描かれているのは、ドラマチックな物語を淡々と進めたいと考えたから。読者の想像力を刺激するため、横顔で表現することを思いついたそうだ。
 「見開きにすると絵が右ページ、お話が左ページという構成になっています。じつは横顔の向きにも意味があって、狼のジャンバルジャンが後ろ向きの気持ちになっているときは、文字側のページを見ていて、前向きな気持ちのときは右側を見ているんです」
 うさぎのコゼットも、ジャンバルジャンにあったときは右側を向いている。
 「そんな仕掛けも絵本を読みながら、気づいてくれるとうれしいです」

 今、五島さんは絵本版『レ・ミゼラブル』の後編を描き進めているところだ。前編と登場人物が変わることから、子どもたちが全体を通じて理解するには少しハードルが高いかもしれない。しかし、五島さんは「子どもたちは大人が思っている以上に大人」と感じた経験から、必ず子どもにも分かってもらえると思っているそうだ。
 その経験とは、子どもがどんな反応をするのかを調べるため、幼稚園で絵本の読み聞かせをしたときのことだ。子どもたちは五島さんの予想とはまったく違う反応を示した。
「ここで笑ってくれるかなと思ったところでは絶対に笑ってくれないし、飽きる子は飽きちゃうし、データとか統計とか関係ないんだと思いました。好きな場面に手を上げてもらうときに周囲にいるお友だちの反応に合わせることもありました。そんな様子を見ていたら、絵本の理解には年齢は関係ないと、すっきりした気持ちになったんです」

 最後は参加者との質疑応答。使っている画材についても回答してくれた。
「モノクロが苦手なので、色はたくさん使います。使うのは、水彩色鉛筆。水で溶かさず、色鉛筆として塗っています。日本製、外国製にかかわらず、直感で色を選ぶことが多いですね」とにこやかに答えていた。
(構成・取材 角田奈穂子 写真・首藤幹夫)

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