築地本マルシェ

たちばな書店 価値観を共有する場所 橘ケンチさん

2018年03月12日

橘ケンチさん

橘ケンチさん

橘ケンチさん

橘ケンチさん

橘ケンチさん

橘ケンチさんら

 EXILE/EXILE THE SECONDのメンバー、橘ケンチさんは「本の魅力をたくさんの人に伝え、さまざまな価値観に触れることができる場所を作りたい」とウェブサイト「たちばな書店」をオープンした。サイトを開設した経緯や本への思いをたっぷりと語った。

———今日はケンチさんと呼ばせていただきますね。さっそくですが、2017年6月に「たちばな書店」を開設したのは、どんな思いからなのでしょうか。

橘さん 昔から本が好きで、本に関するプロジェクトが何かできないかな、とずっと考えていました。ライブツアーで皆さんと直接、コミュニケーションをとることもうれしいことですが、行ける場所には限りがあります。もっと多くの方々に僕らの思いを伝える方法はないかなと考えたとき、本をキーワードにつながれる場所があるといいなと思ったのがきっかけです。
 それに、SNSが普及し、今、この会場にいる皆さんの一人ひとりが情報発信できる時代です。僕らだけが影響を与える時代じゃないと思いますし、日本、そして世界の誰もが影響力を持って、新しい価値観を共有し、お互いが幸せになれればいいなと思っています。
 そう考えたとき、僕が好きな本を紹介したり、サイトを見ている方が好きな本を教えてくれるようなネットの本屋さんはどうだろうと考えていたのです。「たちばな書店」にはたくさんの本の情報が紹介されていますが、僕も知らない本がたくさんあって、楽しいですし、発見があります。

————「たちばな書店」は、リアルな書店をめぐるときのように、「どんな本があるのかな」と探しやすいところに新しさを感じました。周囲からの反響はいかがですか。

橘さん 「本を読むようになった」「元気が出たよ」と言われることが多いですね。投稿してくださる方のおすすめで成り立っている書店なので、人と人とがつながる場になっているのもいいなと思っています。
サイトに掲載しているのは、投稿のごく一部ですが、それ以外の投稿にも全部、目を通していて、毎回、発見があります。たくさんの本のあらすじや表紙を見ているうちに、本の表紙を見ただけで、「こんな本かな」と想像できるように訓練されてきました(笑)

————投稿された本の中で、すでに読んでいたという本もありましたか。

橘さん ありました。ですが、知らない本も多いです。僕が感銘を受けて、「たちばな書店」に初めて投稿したのは、松岡正剛さんの『多読術』(ちくまプリマー新書)でした。早くたくさんの本を読むテクニックを教えてくれるのかと思ったら、本にどう向き合うかを教えてくれる本でした。松岡さんは「本は読んで編集するもの」とおっしゃっていて、読んだ本を無駄にせず、血や肉にしていく手ほどきが書かれています。
 それまでの僕の読書は、読んで終わり、でしたし、線を引くのも、本を汚すようで抵抗がありましたが、『多読術』を読んで以来、印象に残ったところに線を引くようになりました。そうやって読んでいくと、3年くらい経ってから、ぽんと思い出したりするのですよね。すっかり忘れていたつもりなのに、何かの巡り合わせで思い出すことがあるのです。記憶に残る本の読み方を知ると、やめられなくなりますね。

————本を選ぶときは、どんなところに注目されていますか。

橘さん 表紙のデザインですね。CDやレコードでも、ジャケットはアーティストの魅力がいちばん出る部分ですし、本もどんな表紙なのかが気になります。ただ、最近は、本を紹介していただいたり、本をいただくことも多いです。
 最近、印象に残っているのは『SHOE SOG(シュードッグ)』(東洋経済新報社)というナイキの創業者フィル・ナイトが書いた本です。僕は、海外でも本屋さんに行くことが多いのですが、この本もNYの書店で見かけて、英語版を買っていました。でも、なかなか読む時間がなくて……。そんなとき、知り合いから日本語版のコメントを求められて、「やった!日本語版がきた!」と思いましたね(笑)

————ケンチさんは英語もご堪能ですし、洋書も読まれるのですか。

橘さん トライはしますけど、やっぱり日本語の本ほどにはすらすらと読めないです。ですが、語学の勉強は好きなので、楽しみながら読んでいますよ。

————旅先でも本屋さんに行かれることが多いとか。

橘さん 旅行は好きですね。大勢で行くのも好きだし、一人旅も好きです。海外では、必ず本屋さんに寄ります。日本にも面白い本屋さんがあるので、ツアーの合間によく寄ります。本が売れない時代と言われていますが、インディペンデントな本屋さんがすごく増えている印象はありますね。
 本と建築が好きな僕にとって、両方ある本屋さんは最高の場所ですね。電子書籍を使っていた時期もありますが、気がつけば、紙の本に戻っていました。本は一つの作品だと思います。紙の種類にまでこだわって作っているでしょうし、モノとしての存在感に触れると、「やっぱり紙の本がいいなぁ」と思います。

————本を選ぶときは、そのときの気持ちが表れたりしませんか?

橘さん 大いにあると思いますね。疲れているときは、よく眠れる本を探したりしますね。僕の探し方は雑食タイプで、小説も写真集も好きですし、エッセイや雑誌もです。ジャンルに関係なく、そのときの直感で読んでいます。「たちばな書店」も、本業の書店さんなら、投稿された本をカテゴリーに分けたりすると思うのですが、僕はまったく考えていません。

————どんなときに本を読むことが多いのでしょう。

橘さん 本を持ち歩き、空き時間に読みます。読書の時間を意識して作るのは、寝る前くらい。じつは、1冊の本だけを最後まで読み続けるのではなく、だいたい20冊くらいの本を同時並行で読んでいます。「今日は小説がいいな」「今日は写真集かな」という感じで選んでいます。だから、なかなか読み終わらないです。作者の方には申し訳ないですが、それも一つの読書のあり方かなと思っています。

————「たちばな書店」は、書店さんとのコラボイベントも行っていますね。

橘さん 昨年は三省堂書店池袋店さんとやりましたし、先日は八重洲ブックセンターさんとやりました。将来、「たちばな書店」をリアル店舗化してみたいという夢もあるので、書店さんからの企画の申し出は、うれしかったです。実際にやってみたら、大変でしたけど(笑)
 イベントでは、「たちばな書店」の書棚コーナーがあるだけでは面白くないので、アート空間のなかに本があるというイメージで、EXILEのMusic Videoで美術担当をしているスタッフさんに助けてもらいながら、コーナー全体の空間デザインにも取り組みました。予算と経費のバランスを考えたり、いい経験になりましたね。

————アートフォトブックも出していらっしゃいますね。

橘さん はい。きっかけは、「月刊EXILE」の映画レビュー企画です。せっかくやるなら、好きな映画のワンシーンを自分で再現してみようと思い、「リメンバースクリーン」というタイトルで連載しました。22作品くらい紹介した頃に、オリジナルストーリーも作ろうという話になって、7作品作りました。書店さんとコラボした「たちばな書店」では、それらの作品を本にまとめ、イベントの目玉にさせていただきました。めっちゃ、楽しかったです。楽しいことを追求するのが一番だと思いますし、楽しいことなら、力も発揮したくなります。僕はなんでも楽しく感じますし、挑戦するのが大好きです。

————「たちばな書店」は今後、どんなことにチャレンジしたいと考えていますか。

橘さん 本も作ってみたいですし、やりたいことはたくさんあります。リアル書店さんと少し趣を変えて、本にまつわるカルチャーも紹介していきたいですね。たとえば、読書にぴったりの椅子やテーブル、照明、メガネとか。範囲を広げていくと、読書にぴったりの空間とは?という話にまでなってくるのですが、「たちばな書店」は、なんでもありなので、なんでもやっていこうと思っています。

————作家さんとの交流で思い出深いエピソードはありますか。

橘さん ショートショート作家の田丸雅智さんとは、仲良くさせていただいており、彼の執筆方法には衝撃を受けました。「ショートショートって短編でしょ?」って思っている人は多いと思うのですが、田丸さんの作品は、単なる短い小説ではなく、不思議な気持ちになる物語です。ショートショートの書き方講座を全国で開かれているだけあって、執筆のメソッドもしっかり確立されています。僕は「あ、物語ってこうやって作れるのか」と教えていただきました。その人の発想次第で、感動を与えられる作品を作ることができるのです。田丸さんには僕のクリエイティブな感覚をたくさん刺激していただいています。
 ちなみに、田丸さんには「ヘッドリバー」というタイトルで、僕のショートショートストーリーも作っていただきました。僕の青い髪が川に見えたのでしょうね(笑)

————本についてコメントを求められる機会も増えたそうですね。

橘さん はい。『シュードック』にコメントを書いたら、ビル・ゲイツや元テニスプレーヤーのアンドレ・アガシのコメントと並んで紹介されていて、感激しました。高校時代、アンドレ・アガシが大好きでした。僕は書評の専門家ではないので、内容をしっかり分析して紹介するというよりは、自分の価値観と照らし合わせて「僕はこう思いました」というくらいのスタンスでコメントをかかせていただきます。読んだ方から「親近感を感じました」とよく言われますね。
 僕は本を通して人を伝えていきたいです。たとえば、目玉焼きの味付けに醤油派とソース派がいたりしますよね。好みの味付けで「あ、わかる」「あ、違う」って思うじゃないですか。そんなふうに、「本を通じて、その人を知る」ことを「たちばな書店」のテーマの一つにしたいと思っています。

————所属事務所のLDHさんが2月28日に本を出されましたが(『LDH our promise』小学館)、どんな内容なのでしょうか。

橘さん 以前からLDHには、「EXILEステートメント」という夢を叶えるための社内ルールがありました。最初はメンバーだけで共有していたのですが、「スタッフにも共有してもらったほうがいいよね」「若いアーティストにも理解してもらいたいよね」と、共有する仲間が広がっていきました。その所信表明のようなルールを所属アーティストが自分の言葉で表現しながら、一冊の本にまとめました。「嘘をつかない」とか、当たり前ですが、仕事をする上でとても大切なことが書かれています。LDHの考え方が分かりやすく書いてありますし、「プロミス」のもとで団結している会社だということもよく分かっていただける本だと思います。

————今日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。

(構成・取材 角田奈穂子、写真・首藤幹夫)

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