築地本マルシェ

子どもたちにすてきな絵本の出会いを 木村カエラさん・金柿秀幸さん対談

2018年03月16日

木村カエラさんと金柿秀幸さんの対談

木村カエラさんと金柿秀幸さんの対談

木村カエラさんと金柿秀幸さんの対談

木村カエラさんと金柿秀幸さんの対談

 歌手・木村カエラさんと絵本ナビ代表で、父親が読み聞かせ会をする「パパ’s絵本プロジェクト」メンバーでもある金柿秀幸さんの対談のテーマは「子どもたちにすてきな絵本の出会いを」。ふたりの素顔がのぞくトークに、赤ちゃんをだっこしたお母さんや、子ども連れの家族も目立った会場は、やさしい笑顔に包まれた。

――「絵本とのかかわり」「子どもとのかかわり」について話せたらいいなとステージに上がったふたり。顔を合わせたとたん、それぞれが大好きだという絵本の話が始まった。

金柿:そもそもカエラさんと絵本のかかわりは?

カエラ:幼いころから絵本が大好きで、今もうちにたくさんあります。一冊一冊手に取るたびに、読んでもらったおばあちゃんや父のことを思い出しますね。それに、絵本が訴えてくる物語、キラキラとしたことばが大好きで。絵本には、思い出が宿っているんだと思います。

金柿:素敵ですね。ではさっそく、僕らの心に深く残った絵本を紹介していきましょう。

カエラ:思い出深いといえば『どろんこハリー』(ジーン・ジオン著、マーガレット・ブロイ・グレアム絵、わたなべしげみ訳/福音館書店)ですね。よく父親に読んでもらったので、今もページを開くとあのころの空間に戻るような感じがします。

金柿:黒いぶちのある白い犬、ハリーのお話ですね。どろんこになってもお風呂に入らなくて、家族に自分だとわかってもらえなくなっちゃう……そんな家族愛がテーマ。僕も娘が幼いころによく読みました。娘は今高校2年生ですが、いつかあのころを思い出してくれるといいな。

カエラ:絶対、思い出しますよ。

金柿:だといいですね。

カエラ:あと『プータンいまなんじ』(わだよしおみ著、ならさかともこ絵/JULA出版局)は、おばあちゃんを思い出します。主人公は3時にやってくるおばあちゃんを待っているんですが、ページの中に針を回せる時計があって、「今何時?」って数えながら読むんです。

金柿:仕掛け本の走りですよね。

カエラ:ワクワクしながら、自然と時計の読み方を覚えました。

金柿:家族の思い出に残る一冊って、きっとどの家庭にもありますよね。僕は『はらぺこあおむし』(エリック=カール作、もりひさし訳/偕成社)です。学生時代にアメリカに一人旅に出て、向こうの美術館で見つけたんです。仕掛けや色使いに感動して初めて妻にプレゼントしました。その後、娘が生まれて読み聞かせするんですが、物語に聞き入った娘が破いたページを深夜、セロハンテープで補修して……心が温かくなる、しあわせな時間を過ごした思い出深い絵本です。

カエラ:いいお話ですね――あとは大人になって出会った絵本なんですが『ぼくを探しに』(講談社)、『おおきな木』(篠崎書林)も大好きです。

金柿:同じ作者、シェル・シルヴァスタインの絵本ですね。

カエラ:『ぼくを探しに』は、主人公が自分の中の足りない“かけら”を探しに行く話なんですが、私自身歌詞を書くときに、“心”をテーマにして書くことが多いんです。人生の中で欠けているところがあるから、人は幸せを求めてしまう。この絵本を読んで“かけら”ということばを大事にするようになりました。

金柿:深いですね。『おおきな木』も、無償の愛がテーマです。この絵本にいつ出会うか、タイミングによって受け取り方が違ってくると思うな。本当に、絵本って深い。

――ふたりが選んだ絵本は計20冊。ステージのスクリーンに映し出された表紙を見ながら「次、何を紹介しよう?」と、カエラさんと金柿さんは楽しそうだ。

金柿:ガラッと趣向を変えますよ。僕が大好きな絵本です。『でんせつのきょだいあんまんをはこべ』(サトシン著、よしながこうたく絵/講談社)。

カエラ:アンマン?

金柿:“あんまん”です。国の名前じゃないですよ。マッチョなアリ、アリヤマアリロウがあんまんをそのまま巣へ運ぶ“プロジェクトX”みたいな暑苦しい話なんです。

カエラ:何、おもしろそう! おもしろいってことでは、私も『あかにんじゃ』(穂村弘作、木内達朗絵/岩崎書店)を選んできましたよ。

金柿:忍者だけど赤いから、目立って困るって話ですよね。

カエラ:そうそう、変身が上手なんですけど、おじさんになってみたら赤くて飲酒運転で警察につかまっちゃう、みたいな(笑)

金柿:『サカサかぞくのだんながなんだ』(宮西達也作、ほるぷ出版)もいいですよ。物語が全部、たけやぶやけた、みたいな回文になっているんです。

カエラ:おもしろい!私、今回、絵本を選ぶとき、結構まじめに考えたんですけど(笑)

金柿:僕もまじめに好きな絵本を選びました。絵本って、役に立つものと役に立たないものがあるんですよ(笑)

カエラ:そうですよね、笑える絵本って、それだけで素敵。

金柿:いやホント、子どもがことばを習得する時期は、読み聞かせて周りに失笑されようが、回文やだじゃれの話っていいんですよ。ことばに関心を持ちますから。

――業界きっての絵本好きとして知られるカエラさん、今、絵本を制作しているそうだ。

金柿:お話しできる範囲でいいですけれど、今度、絵本を出版されるんですよね?

カエラ:はい、ずっと絵本を作るのが夢だったんです。もう絵は描き終えました。

金柿:じゃ、今は文を書いておられるんですね。

カエラ:ええ。以前から曲の歌詞を書く中で、「これ、絵本にできるといいな」と思っていたものが何作かあるんです。その中のひとつをモチーフに、今回絵本にします。心の中には宝箱がある、いやなことや気持ちを飲み込んでばかりだと、心の居場所はごみ箱になっちゃう。キラキラとしたものを詰めて、自分らしくいよう――そんな思いを込めました。

金柿:なんだか、難しそうですね。

カエラ:いえいえ、とにかく楽しくって。

金柿:事前に会場からいただいた質問にもあったんですが、絵本を作るときって、絵から描くんですか? 文から?

カエラ:今回は歌詞があったんですけど、実際は、全部頭の中でインスピレーションをまとめて、練って練って、まとまったときに一気に書くほうですね。

金柿:それはすごいですね。

カエラ:絵本作りは初めてのことで自信はなかったんですけど、なんか、やってみたら「結構いいかも」って(笑)

金柿:会心の作になったと。

カエラ:ええ。

金柿:発売は4月下旬でしたね。楽しみに待ちましょう。そろそろ、時間が残り少なくなってきました。事前にいただいた質問にお答えしましょうか。「カエラさんは、子どもに絵本を選ぶとき、どこから選ぶ?」

カエラ:現実とつながっているお話が好きです。でも、絵や発想のおもしろさから入っていくかな。例えば、ミロコマチコさんの『オオカミがとぶひ』(イースト・プレス)が大好きなんですね。

金柿:風が強い日はオオカミが飛び回っている、なんてユニークな発想ですよね。

カエラ:「星空はクジャクの羽根」ってページが好きで。子どもたちには、大人になってもこうした感性を大事にしてほしいなと思うんです。

金柿:最後に「子育て真っ最中のパパ、ママにエールをください」って声がありました。僕から話すと――「子育ては期間限定のプロジェクトだ」って、よくいうんです。今すごく大変でも、子育ては必ず終わりがきます。振り返ってみて僕自身、娘にもっと絵本を読んであげたかったなって思う。子どもと一緒に絵本を読んで話すって、宝物のような時間ですよ。大切にしてください。

カエラ:子育てって達成感がないじゃないですか。ひとりで仕事しているなら、頑張った分だけ結果が出るけれど、子育てはそうじゃない。家事の最中に子どもが泣いて、作業が中途半端に終わることもあるでしょう。そうしたことがお母さんやお父さんの中に積もっていって、疲れてしまうときだってありますよね。でも、金柿さんのおっしゃるとおり、子どもは知らない間に成長しちゃう。一緒にいられる時間は大事なんです。絵本を介して、お子さんにたくさん思い出を作ってあげることで、愛のある子どもに育つんじゃないかな。がんばってください。

――ときおり会場に話しかけながら、アットホームな雰囲気の中でトークを終えたカエラさんと金柿さん。栃木県から家族と訪れた坂入志歩さん(8才・小2)は「おもしろかった。『あかにんじゃ』を読みたい!」と興奮冷めやらぬ様子。志歩さんのお母さんの優奈さん(30)は「同じ母親として、カエラさんの話に共感しました」とにっこり。子どもも大人も絵本にふれたくなる、貴重な時間となったようだ。
(文・吉岡秀子/写真・首藤幹夫)
 

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