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「アマゾンのすごいルール」 社員の善意より、仕組みづくりに重心

アマゾンのすごいルール [著]佐藤将之

 アマゾン日本上陸の2000年から約15年間、日本法人に在籍した著者が綴(つづ)る内側から見たアマゾンの全貌(ぜんぼう)だ。
 印象的なのは、「『善意』は働かない。働くのは『仕組み』だ」という創業者ジェフ・ベゾスの口癖が紹介されているように、社員の善意に期待する以前に、仕組みづくりに重心がおかれていることだ。
 豊富な品揃(しなぞろ)え→顧客満足度向上→新規顧客増大→売り手が多く集まる→売り手同士の競争と規模の拡大によりコスト低減→低価格→顧客満足度向上。このサイクルを回す。利益は顧客に還元し、株主還元はほとんどないが、この仕組みが株主に支持される。
 人材採用の仕組みも興味深い。「Customer Obsession(顧客へのこだわり)」から始まる14項目のリーダーシップ理念を明示。それを備えているかが基準で、学歴不問。2次面接は最大5人の面接官が1対1の面接を順次重ねる。うちの1人は「バーレイザー(バーを上げる者)」と呼ばれ、一段高い視点から面接し、採用で拒否権を行使できる。
 「Customers Rule!(お客様が決めるんだ!)」。アマゾンの本質はこの言葉に集約されると著者。同じ顧客第一主義でも仕組み化することで強さが生まれるようだ。=朝日新聞2018年5月12日掲載