視線

視線

視線

読書面に連載。画集、写真集などのビジュアル本をとりあげ、写真家の視点や被写体の造形的な美について解説します。

バックナンバー:2011年

Buena Vista  [著]竹沢うるま

Buena Vista  [著]竹沢うるま

 うっすらと陽光の広がる海原へ、岸壁からダイヴする後ろ姿から、この写真集は始まる。逆光のなかでシルエットと化した下半身、その右足の先が岸にわずかに触れ、画面の上方に黄色みを帯びた空が、細長く傾(かし)いでいる。  スペイ………[もっと読む]

[文]北澤憲昭(美術評論家) [掲載]2015年11月01日

江戸のしかけ絵本―立版古とおもちゃ絵 [監修]佐久間保明 [編]本庄美千代

江戸のしかけ絵本―立版古とおもちゃ絵 [監修]佐久間保明 [編]本庄美千代

 本書がとりあげる立版古(たてばんこ)は実に当世風だ。  まず、浮世絵の絵師により、いくつものパーツが一枚の紙にデザインされているのだが、これが面白い。余白を少なくするために並んでいる人が逆さに配置されていたりする。山、………[もっと読む]

[文]保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員) [掲載]2015年10月18日

夢に出そうなミクロ生物 [編]ミクロ生物選定委員会

夢に出そうなミクロ生物 [編]ミクロ生物選定委員会

 人の世では、表現されたモノや図案のオリジナリティーが話題になる。しかしミクロの生き物の世界では、人間の創造力や想像力をはるかに超える造形が生み出されていた——。そう思わせる一冊だ。  収められているのは、体長1、2ミリ………[もっと読む]

[文]大西若人(本社編集委員) [掲載]2015年10月11日

かえりみち [作・絵]森洋子

かえりみち [作・絵]森洋子

 子供の頃、横断歩道の白いところだけを踏んで渡ったことがある。白線の外側は海で、怖(おそ)ろしいワニがうようよ泳いでいるのだ。足を踏み外したら大変なことになる。たった一人のごっこ遊び。でも、今、考えると、不思議なほど真剣………[もっと読む]

[文]穂村弘(歌人) [掲載]2015年10月04日

向田邦子—おしゃれの流儀 [編]向田和子・かごしま近代文学館

向田邦子—おしゃれの流儀 [編]向田和子・かごしま近代文学館

 私には憧れの作家が三人いる。宇野千代、マルグリット・デュラス、そして向田邦子。三人とも、波乱に満ちた人生を個性豊かに輝いて生きた女性たちである。作家の先輩——と呼ぶのはまだまだおこがましい気がする。むしろ人生の先輩と呼………[もっと読む]

[文]原田マハ(作家) [掲載]2015年09月20日

安東陽子|テキスタイル・空間・建築 [著]安東陽子

安東陽子|テキスタイル・空間・建築 [著]安東陽子

 重々しさや硬質さや真面目さからなかなか抜け出せない建築とその空間を、軽やかで柔らかでおおらかなものへと変えていくこと。21世紀に入って以降の日本の建築の変化を「陰」で支えてきたひとりに、テキスタイルのデザイナーでありコ………[もっと読む]

[文]保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員) [掲載]2015年09月13日

ナンシー関 原寸大!生ハンコ集 [著]ナンシー関

ナンシー関 原寸大!生ハンコ集 [著]ナンシー関

 ナンシー関のコラムはえぐい。しかし、そのえぐさは、ある種の柑橘類(かんきつるい)のように、さわやかさをともなっている。否定の姿勢の潔さのせいだと思う。  ふつうなら、もだもだとして言いよどむところに、彼女は本音のナイフ………[もっと読む]

[文]北澤憲昭(美術評論家) [掲載]2015年09月06日

JAPAN ロバート・ブルーム画集 [監修]岡部昌幸

JAPAN ロバート・ブルーム画集 [監修]岡部昌幸

 明治期の人々の暮らしといえば、何となくセピア風に色あせた姿を思い起こす。街や風俗を収めた白黒写真に彩色した、外国人向けの横浜写真などの影響だろうか。  だからこの本で、「花売り」や米メトロポリタン美術館所蔵の「飴屋」(………[もっと読む]

[文]大西若人(本社編集委員) [掲載]2015年08月23日

どっとこ どうぶつえん [著]中村至男(のりお)

どっとこ どうぶつえん [著]中村至男(のりお)

 「シロクマって、実は意外と足が長いのよ」と或(あ)る絵本作家さんが教えてくれた。「そういえば、ワニってほんとは緑色じゃないんですよね」と別の絵本作家さんは云(い)った。なるほど、と思った。どちらもそういえばそうだなあ。………[もっと読む]

[文]穂村弘(歌人) [掲載]2015年08月16日

幻想の花園—図説—美学特殊講義 [著]谷川渥

幻想の花園—図説—美学特殊講義 [著]谷川渥

 先日、クロード・モネが生前暮らした家と庭が保存されているジヴェルニーを訪問した。庭には夏の花々が咲き乱れ、池には睡蓮(すいれん)が微笑(ほほえ)むように白い花弁をほころばせて、眺めるほどにうっとりする。モネは、絵を描く………[もっと読む]

[文]原田マハ(作家) [掲載]2015年08月09日

海の美しい無脊椎動物 [著]S・ミドルトン [監修]武田正倫

海の美しい無脊椎動物 [著]S・ミドルトン [監修]武田正倫

 直立二足歩行をする人間のすがたは背骨によって特徴づけられる。「脊椎(せきつい)」とも呼ばれるこの骨は人体の柱であり、また、脊髄(せきずい)という重要な神経系を収める容器の役を果たしている。  脊椎を有するのは、むろん人………[もっと読む]

[文]北澤憲昭(美術評論家) [掲載]2015年08月02日

In the Wake 震災以後:日本の写真家がとらえた3・11 [編著]ボストン美術館

In the Wake 震災以後:日本の写真家がとらえた3・11 [編著]ボストン美術館

 本書は、米ボストン美術館で開催されていた展覧会のカタログである。出品作家は15人、報道写真家はおらず、全員がアーティストであった。  彼らの作品を見ていると、目の前にある世界がどんなに悲惨な状態であろうと、人はそれを「………[もっと読む]

[文]保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員) [掲載]2015年07月19日

分解してみました—現代人のためのテクノロジー解体新書 [著]T・マクレラン [訳]金成希

分解してみました—現代人のためのテクノロジー解体新書 [著]T・マクレラン [訳]金成希

 家庭における親の権威を低下させた要因の一つは、家電品の高度化ではないか。  ひと昔前なら、故障したら分解して「これがこうだから、こうすればいいはず」と家庭で修理できた面がある。しかし今の電脳化された家電品では、多くの機………[もっと読む]

[文]大西若人(本社編集委員) [掲載]2015年07月12日

おやすみ おやすみ [文]シャーロット・ゾロトウ [絵]ウラジーミル・ボブリ [訳]ふしみ みさを

おやすみ おやすみ [文]シャーロット・ゾロトウ [絵]ウラジーミル・ボブリ [訳]ふしみ みさを

 『おやすみ おやすみ』には、いろいろな動物や虫たちの眠りが描かれている。ブルーグレーの本文用紙が使われていて、本全体が夜のようだ。  クマの眠り、ハトの眠り、サカナの眠りときて、その次はガの眠りというのが面白い。チョウ………[もっと読む]

[文]穂村弘(歌人) [掲載]2015年07月05日

山口小夜子 未来を着る人 [編]東京都現代美術館

山口小夜子 未来を着る人 [編]東京都現代美術館

 文豪・谷崎潤一郎に『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』という名著がある。この本の中で谷崎は、日本人がいかに「陰」に敏感であるかを看破している。光をありがたがる西洋人にくらべて、日本人は、むしろ陰の美しさをよく知っている。そ………[もっと読む]

[文]原田マハ(作家) [掲載]2015年06月21日

ここに掲載されている記事や書評などの情報は、原則的に初出時のものです。

ページトップへ戻る