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ホリエモンの宇宙論 [著]堀江貴文

[評者]荒俣宏(作家)

[掲載]2011年05月15日

[ジャンル]経済 科学・生物

表紙画像

■しょぼさにロマン、星へバイク便

 数年前にラスベガスに行って、ホーキング博士も体験した無重力飛行に挑戦したとき、アメリカの民間宇宙旅行熱が尋常でないことを実感した。NASA(米航空宇宙局)が宇宙開発を民間企業に開放し、ジェットコースターなみの人気アトラクションになっていたからだ。この分野に投資するベンチャー企業家に取材したら、これまで政府に任せていたのが失敗だった、と異口同音に言う。
 わが日本では民間宇宙旅行ビジネスといってもまだ夢の夢にすぎないが、ホリエモンが真っ先に参入している。その本気度が推し量れる本書は「宇宙論」という壮大な表題にまったく似合わない、みごとに「しょぼい」話である。彼がめざすビジネスは、電源があってカメラと通信機能が使える携帯電話を最小型衛星にパワーアップさせ、これを手づくりの極小ロケットで打ち上げ、重力が弱くて発着が容易な小惑星を調査させることにある。数千万円で短期間にできる最低の宇宙進出だが、決しておもちゃではない。なぜなら、衛星はGPS(全地球測位システム)、気象情報、通信などのビジネスにすぐ活用できるからだ。いわば宇宙に「バイク便」を飛ばすことが日本の生きる道と見切った、まさに身の程を弁(わきま)えたしょぼさ。日米両政府と法律の冷たさを告発する恨み節も、ここではむしろ頼もしく読める。
 小惑星には有用金属を多量に有するものがたくさんあって、月や火星よりずっと利用価値が高い。しかも太陽系の外縁には、水や有機物(すなわち生命の源)を含む彗星(すいせい)を揃(そろ)えた小惑星群だってあるのだ。生命の秘密すら解明できるかもしれない。しょぼい経済性追求の「宇宙論」からも心をくすぐるロマンが伝わってくる。プラモデル少年の目の輝きを帯びた極小ロケット打ち上げ実験は、目下進行中だ。収監中の時間をたっぷり使って、本書でぶちあげたミッションを完遂してくれ。
 評・荒俣宏(作家)
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 講談社・1500円/ほりえ・たかふみ 72年生まれ。元ライブドア代表取締役CEO。『徹底抗戦』『拝金』『成金』

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