書評・最新書評

石川直樹 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)百年前の山を旅する(服部文祥著、東京新聞出版部・1800円)
 (2)空白の五マイル(角幡唯介著、集英社・1680円)
 (3)哲学者とオオカミ(マーク・ローランズ著、今泉みね子訳、白水社・2520円)

 現代における冒険の最先端はどこにあるのか。未踏の地を踏査する遠征が難しくなった時代、より純粋な体験を求めて素手で荒野へ分け入る者がいる。今年はそうした行動と表現の強度を同時に高められる稀有(けう)な書き手が現れ、響く作品を残した年であると思う。
 (1)(2)装備を切り詰めて食料を現地調達する「サバイバル登山」を実践する服部文祥の最新作『百年前の山を旅する』は、登山道として整備されているわけではない道を、昔の山人と同じような装備で歩き、自らの身体を通じて活写した。また角幡唯介の『空白の五マイル』は、チベットのツアンポー峡谷にある人跡未踏の「五マイル」へ単独で向かい、這々(ほうほう)の体で生還した体験から冒険とは何かを世に問うた。
 (3)人間が生きる意味は何か。二人の書き手が身を投じて得ようとした答えを狼(おおかみ)との生活から導き出した一冊も、ぼくの思考を大きく揺さぶるものとなった。(写真家)

関連記事

ページトップへ戻る