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奥泉光 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)20世紀を語る音楽 1・2(アレックス・ロス著、柿沼敏江訳、みすず書房・1=4200円、2=3990円)
 (2)ジョージ・オーウェル日記(ピーター・デイヴィソン編、高儀進訳、白水社・8820円)
 (3)俺俺(星野智幸著、新潮社・1680円)

 数年前から二十世紀音楽についてちらほらと勉強している、というほどでもないが、関心を持っている自分としては、(1)は読まないわけにはいかない。書評でも書いたが、いわゆるクラシック音楽の、それも作曲家に限定されてはいるものの、大量の資料を駆使したうえで、「現代音楽」につきここまで網羅的に論じたものは他にないだろう。
 今年はボラーニョ『野生の探偵たち』、ピンチョン『メイスン&ディクスン』、エーコ『バウドリーノ』といった大部の翻訳小説がいくつも出版された。どれも読み応え十分であり、日本の翻訳文化の高水準にあらためて感じ入るものがあった。同じく大部の(2)は小説ではないけれど、戦間期英国の下層社会についての、『一九八四年』の作者による批評的証言であり、非常に興味深い。日本語で書かれた小説にも魅力あるものがいくつかあったが、自分が読んだ範囲内で一つだけ選ぶとすれば(3)か。(作家)

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