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逢坂剛 書評委員お薦め「今年の3点」

[評者]今年の3点(書評委員)

[掲載]2010年12月19日

表紙画像

 (1)カチンの森(ヴィクトル・ザスラフスキー著、根岸隆夫訳、みすず書房・2940円)
 (2)ウラジオストクから来た女(高城高著、東京創元社・1680円)
 (3)死支度(勝目梓著、講談社・1680円)

 『カチンの森』は、いまだに全面解決していない第2次大戦中のソ連による大量虐殺の、最新の研究書。ナチスのホロコースト、南京大虐殺については、いまでも議論が絶えないが、カチン事件を含む戦勝国の蛮行は、とかく見過ごされがちだった。それを鋭く告発する好著といえよう。
 『ウラジオストクから来た女』は、日本のハードボイルド小説の先駆者、高城高の函館水上警察シリーズの第2弾。近ごろ少なくなった、小説好きの大人のための小説である。文章にも考証にも、まったく揺るぎがない。著者には、新聞記者時代のブランクを、今からでも取りもどしてほしいと切に願う。
 『死支度』は、80歳に近づいた著者の告白的性遍歴の記録といえよう。その妄想力には、少なからず驚かされる。老齢に差しかかりつつある読者だけでなく、今どきの草食系男子にも、ぜひ読んでもらいたい快作。(作家)

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